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「大根の20倍」は本当? 切り干し大根の栄養価に隠された“カラクリ” 管理栄養士が教える賢い食べ方とは
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教えてくれた人:和漢 歩実

季節を問わず、比較的価格が安定している切り干し大根。保存食として、昔から日本各地で作られてきました。物価高騰が気になる昨今、ストックしておきたい食品のひとつとして、価格や保存の観点だけでなく、優れた栄養価にも注目しておきたいところ。よく「大根より20倍も栄養がある」といわれることがありますが、実際のところはどうなのでしょうか。切り干し大根について、栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。
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乾燥で旨味と栄養が凝縮 少量でも取り入れやすい
切り干し大根は、大根を細切りにして乾燥させた保存食です。乾燥させることで甘味が増し、旨味と栄養が凝縮します。少量でも手軽に取り入れやすく、さまざまな栄養摂取が期待できるでしょう。
代表的な栄養素として挙げられるのは、カルシウムです。骨粗しょう症の予防をはじめ、骨や歯の健康に欠かせません。このほか、体内の余分な塩分を排出して水分量を調整するカリウムや食物繊維も多く、むくみや便秘が気になる人にもおすすめです。
「切り干し大根は、生の大根の20倍ものカルシウムがある」といわれることがありますが、これは数字上の比較です。たしかに、「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに可食部100グラムでカルシウム量をみると、生の大根(皮なし)が23ミリグラムに対し、切り干し大根は500ミリグラムで、約22倍もの差があります。
しかし、実際には、乾燥した切り干し大根をそんなにたくさん食べることはないでしょう。たとえば、おでんで使う生の大根1個を100グラム、小鉢で使う1人前の切り干し大根を15グラムとすると、カルシウム量は生の大根が23ミリグラム、切り干し大根は75ミリグラムです。20倍まではいかなくても、単純計算で切り干し大根の小鉢のほうが、約3倍もカルシウムが多いことになります。
一方で、大根の辛味成分で消化促進に関与するイソチオシアネートや、ビタミンCは乾燥の過程で損失が多く、生の大根に比べると含有量が少なくなります。大根と切り干し大根、どちらが優れているということではなく、それぞれのメリットを得るために、バランス良く食卓に取り入れていきましょう。
切り干し大根の栄養を逃さないポイントとは
切り干し大根の調理は、水洗いして汚れを取ったあとに水で戻す工程が一般的ですが、長時間水に浸しておくと、カリウムなどの水溶性の栄養素が溶け出してしまいます。旨味もあるので、切り干し大根の戻し汁は、そのまま煮汁やスープなどに使うと良いでしょう。
また、水で戻さず、加熱しなくても食べられます。水洗いした切り干し大根と、たとえば希釈しためんつゆや浅漬けの素、トマトジュースなどの水分をポリ袋に適量入れて、揉み込むだけで即席漬けが完成です。ツナやシラス、ゴマ、塩昆布などと和えると、栄養バランスが整うのでおすすめです。災害時の非常食としても、心強い存在になるでしょう。
切り干し大根は、店頭では常温の棚に置かれていますが、家庭では冷蔵庫での保存がおすすめです。開封後は、袋ごとジッパー付きの密封袋に入れて冷蔵保存し、乾燥を防ぎます。
価格が比較的安定し、保存性が高く、栄養価も高い切り干し大根は、まさに和の“スーパーフード”ともいえる存在。ストックしておき、日々の食事に上手に取り入れていきたいですね。
(Hint-Pot編集部)
和漢 歩実(わかん・ゆみ)
栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾
