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寿司、ラーメンの次は「お弁当」 創業138年の老舗駅弁屋がパリに挑む、日本の食文化を世界へ広げる20年越しの夢

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部

まねき食品が今年オープンしたフランス・パリの弁当店【写真提供:まねき食品】
まねき食品が今年オープンしたフランス・パリの弁当店【写真提供:まねき食品】

「幕の内弁当」の元祖として知られる、兵庫県姫路市の老舗企業・まねき食品。創業138年を迎える同社が今年1月、フランス・パリ中心部に弁当店をオープンしました。入社以来20年近く「お弁当を世界へ」と言い続けてきた竹田典高代表取締役社長に、その挑戦の軌跡を伺いました。

 ◇ ◇ ◇

「“本場”から来た本物の味」を世界へ

 まねき食品が初めて世界にお弁当を持ち出したのは、2015年のミラノ万博でした。当時、社長とともに現地へ赴いたのは、10代から50年近くまねき食品の厨房を支えてきた総料理長。誇りを持って料理をプレゼンテーションする姿に、多くの人々が引き込まれていく様子を目の当たりにし、日本人料理人の価値を実感したといいます。

 海外では日本発ではない事業者が日本食レストランを展開しているケースも少なくありません。だからこそ、「“本場”から来た本物の味」をしっかりプレゼンしたいという思いが、さらに強くなっていきました。

 竹田社長にとって、幕の内弁当は単なる食事ではありません。

「幕の内弁当は、ただ詰めるだけのお弁当ではなく、歌舞伎やお芝居の合間に食べるという日本文化の要素が強いものです。その文化を世界に発信していきたい」

 そうした思いをさらに強くしたのが、国内の老舗駅弁メーカー2社とともに2025年2月にチューリッヒ中央駅で行ったポップアップ出店でした。ヨーロッパの駅は素晴らしい空間でありながら、売られている食事といえばサンドイッチなど簡素なものが中心。そんななか、日本の駅弁文化への反応に、大きな手応えを感じたといいます。

 1日200食のお弁当を用意したところ、わずか2時間ほどで完売。日本から米を持ち込む必要があったうえ、物流や人員にも限りがあり、「もっとあればさらに売れていた」と振り返ります。価格は当時のレートで4000円を超えていましたが、現地では「安すぎる」と驚かれたほど、好評を博しました。

日本食があふれるパリで、「お弁当」にこだわる理由

 パリにはすでに寿司、ラーメン、おにぎりと、日本食が幅広く浸透しています。そんななか、まねき食品があえて「お弁当」にこだわった背景には、“文化ごと”届けられる強みがありました。

 竹田社長は、お弁当にはパッケージや盛りつけ、中身の構成など、自由度の高い表現ができる魅力があると話します。フランスでも注目度の高い日本のアニメや伝統文化との親和性が高く、コラボレーション展開しやすいといいます。

「フランスでも日本のアニメなどとコラボするだけでなく、現地ブランドやシェフと共同展開してみたいですね」

 さらに見据えるのは、“パリ発”のお弁当文化を日本へ逆輸入することです。

「パリには多くの有名ブランドがあります。そうしたブランドや『パリ・コレクション』などにお弁当を納品できれば、お弁当自体のブランディングに寄与します。日本人のフランスへの憧れも強いので、そこから日本へ逆輸入する形も考えました」

 パリでお弁当文化を根づかせることができれば、ほかのヨーロッパ諸国への展開にもつながります。ヨーロッパで認められたお弁当が日本へ戻ることで、その価値をさらに高められると考えているのです。