Hint-Pot | ヒントポット ―くらしがきらめく ヒントのギフト―

仕事・人生

高嶋政伸さん、280万円の借金が変えた半生 明かした俳優転身の“真実”と、妥協なき役作りの流儀とは

公開日:  /  更新日:

著者:日下 千帆

タマネギ50個のみじん切り、リンゴ30個の皮むきを毎日した5か月間

役作りについて語る高嶋政伸さん【写真:冨田味我】
役作りについて語る高嶋政伸さん【写真:冨田味我】

――これまでいろいろとご苦労もあったかと思いますが、高嶋さんは徹底した役作りでも知られています。とくに難しかった役はありますか?

「日本料理史上、屈指の料理人でいらっしゃる村上信夫先生の役です。帝国ホテルの神様と呼ばれる存在の方でした。出張帰りに新幹線から降りたところ、マネージャーからこの役のオファーの話を聞き、スーツケースを引きながら帝国ホテルのレストラン『ラ・ブラスリー』に向かいました。まだ先生がお亡くなりになったばかりの頃で、スタッフが本やお写真を見せてくれながら先生のことをご紹介くださいました。お話を伺ううちに、とんでもない大役を頂いたことに気づいたのです」

――大役を演じるうえで、どのような役作りをされたのですか?

「その日からは大変です。先生の包丁をお借りして役作りに入りました。5か月間、タマネギのみじん切り50個と、リンゴの皮むき30個を毎日続けました。もう指を切るのも怖くなくなりましたね」

――料理の習得以外にも取り組まれたのですか?

「フランス語の勉強、食材とピタリとマッチするワインの組み合わせなど、徹底的に追求しました。あるときは、友人を招いてフルコースを振る舞う練習をしたのですが、下準備に3日かけました」

――役作りで手ごたえを感じた場面はありましたか?

「『し』と『ひ』が逆になる江戸弁と、厨房での移動で角を曲がるときに料理台に手を添えながら曲がる動作をマスターしたときには、厨房のスタッフから『村上先生ご本人がいらっしゃるようだ』とお褒めの言葉をいただきました。でも、そこに至るまでが本当に大変だったので、もしタイムリープして過去に戻れると言われても、その作品よりあとの時間にしたいです(笑)」

 後編では、第1子の誕生がきっかけとなった初エッセイにまつわる秘話と、高嶋さんの父親としての素顔をお届けします。

(日下 千帆)

日下 千帆(くさか・ちほ)

1968年、東京都生まれ。成蹊大学法学部政治学科を卒業後、テレビ朝日入社。編成局アナウンス部に配属され、報道、情報、スポーツ、バラエティとすべてのジャンルの番組を担当。1997年の退社後は、フリーアナウンサーとして、番組のキャスター、イベント司会、ナレーターのほか、企業研修講師として活躍中。