仕事・人生
日本の木造文化財を支える、“におい”のスペシャリスト “シロアリ探知犬”の日常と引退後
公開日: / 更新日:

神社仏閣をはじめとする木造文化財は、日本が誇る貴重な財産です。しかし、その価値を脅かす存在のひとつがシロアリ。とはいえ、文化財は壁や床を壊して調査することができません。そんな現場で活躍しているのが、鋭い嗅覚でシロアリの気配を探る「シロアリ探知犬」です。どのように日本の文化財を守っているのでしょうか。25年以上にわたりシロアリバスターズとして防除施工に携わり、その後探知犬ハンドラーとなった下山当(あたる)さんに話を聞きました。
◇ ◇ ◇
日本で初めて導入されたシロアリ探知犬
シロアリ探知犬チーム「くんくんズ」を保有するアサンテは、1973年に設立したシロアリ防除事業で全国シェアトップを誇る企業です。2006年にはシロアリ探知犬を日本で初めてアメリカから導入し、育成や運用のノウハウを培ってきました。現在は神田明神をはじめとする神社仏閣や木造文化財の調査にも携わっています。
シロアリ探知犬は、シロアリのにおいを嗅ぎ分けて存在を知らせる“働く犬”です。文化財の調査で探知犬が重宝される理由は、建物を傷つけずに調査できることだといいます。
「文化財の場合は、シロアリがいるから調査するというより、『いるか、いないか』を確認することが重要なんです。床下に入れない建物も多く、人間が目で確認できない場所を調査するのが探知犬の役割です」
一般住宅では床下から人が目視で調査できるケースがほとんどです。一方、文化財では構造上、人が入り込めない場所も多く、探知犬ならではの能力が生かされます。
住職や宮司らからは、「こういう仕事をする犬がいるんだ」と驚かれることも多いそうです。
「絶対にいない」と思った築10年の住宅で…
下山さんが探知犬の能力を実感した出来事として印象深く振り返るのが、築10年ほどの住宅での調査です。床下は全面コンクリートで、シロアリ被害を疑う要素はほとんどなく、下山さん自身も「まずいないだろう」と思いながら調査を始めたといいます。
しかし、玄関に入った瞬間から探知犬の様子が普段と違いました。
「調査を始めると、犬が何度も同じ場所で反応したんです。床下を確認したところ、実際にシロアリ被害が見つかりました」
人では気づかなかった異変を、犬が教えてくれた瞬間でした。
「犬は嘘をつかないから見てもらいたい」と、あえて探知犬による調査を希望する依頼者もいるといいます。
