お出かけ
「ベッドの部屋はないのか」 外国人客が増えた老舗ホテルで起きた変化 日本の「和室」に新たなニーズ
公開日: / 更新日:
変わる客室ニーズと宿泊スタイル

近年、世界遺産・熊野古道の玄関口として、世界中から観光客が集まる和歌山県那智勝浦町。人口1万3119人(2026年6月末現在)と、決して大きな町ではありません。一方で、那智勝浦町への外国人訪問者数は2025年に約11万5000人に達し、前年比で約40%増を記録しました。駅前の足湯エリアではさまざまな言語が飛び交います。
こうした外国人観光客の増加を背景に、この地で70年にわたって旅館業を営んできたホテル浦島でも、宿泊客のニーズに変化が生じているそうです。ホテルスタッフによると、ここ数年、外国人観光客から「洋室タイプ、つまりベッドの部屋はないのか」という問い合わせが目立つようになったといいます。
また「夕食時に布団が敷かれる」という日本の旅館ならではのサービスも、年々増加している外国人観光客の滞在スタイルに合わない場合があります。とくに多いのが「食事なしプラン」での滞在。館内で夕食が提供される時間帯に部屋でくつろいでいることもあるため、スタッフが布団を敷きに訪れることが、必ずしも歓迎されるものではないようです。
さらに日本人観光客からも、ベッドを希望する声が多く届くようになりました。創業当時から通い続けるリピーター客も少なくなく、年齢を重ねたことで、床からの立ち座りや布団での就寝に負担を感じる人もいるそうです。
そこでホテル浦島が選んだのは、完全に洋室へ切り替えることではなく、“和洋のハイブリッド”でした。外国人には「日本らしさ」を感じさせ、日本人にはなじみのある畳を残し、その上にベッドを配置。和の温もりと洋の機能性を両立させています。
高まる“泊食分離”需要 専門家が読み解くトレンドの裏側
ツーリズム総合研究所の石原義郎代表によると、こうした和洋折衷の客室は、昨今のトレンドの1つだといいます。一方、インバウンドの増加などを背景に増える「食事なしプラン」は、旅館の運営にも影響を与えているようです。
「訪日旅行でいわゆる“泊食分離”の需要が高くなってきています。加えて、コロナ後の宿泊業界の人材難やコスト高、国内旅行でも連泊、ひとり旅の増加もあり、需要と供給の両面で変化が起きています。これまでは『食』が宿泊料金の根拠になっていましたが、泊食分離となると、『宿』そのもので価値を認めてもらわなくてはなりません。和洋折衷の客室が増えているのも、部屋のリニューアルやサービスの向上で、宿泊に見合う価値を提供しようとする動きの表れと見ています」
和室という日本ならではの空間を守りながら、そこに新たな価値やサービスをどう取り入れていくのか。その模索は、これからも続いていきそうです。
(Hint-Pot編集部)
