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相次ぐ冠水被害、汚水に潜む「破傷風」とは 極度のけいれんで骨折も…医師が教える処置と対策
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今夏、相次ぐゲリラ豪雨や線状降水帯の発生により、各地で河川の氾濫や低い土地の浸水といった被害が続出しています。中でも身近な脅威となりつつあるのが、道路の冠水。8月だけでも千葉や北陸など、多くの地域で甚大な被害をもたらしています。冠水した道路を通行することにはさまざまな危険が伴いますが、無事に水から上がった後でも、油断ならないのがさまざまな感染症リスク。いったいどんな病気があるのでしょうか。林外科・内科クリニックの林裕章理事長に話を聞きました。
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全国各地で豪雨による冠水被害が続出
まず前提として、冠水した道路において「水が浅そうだから歩ける」と判断することは大変危険です。濁った水で見えないマンホールや側溝への転落、流れに足を取られることや漂流物による外傷、切れた電線による感電など、命にも直結するさまざまな危険が潜んでいます。最も重要なのは、冠水した道路には入らないこと。その上で、やむを得ずそういった環境に足を踏み入れた際、傷を負ったり、傷口や粘膜に汚れた水が触れたりした後に問題になるのが感染症です。
冠水した水は雨水だけとは限りません。下水、泥、糞尿など、さまざまな有機物が混じっている可能性があります。そこに小さな切り傷、靴ずれ、虫刺されをかいた傷などがあると、ふつうの傷の化膿に加えて、破傷風などのリスクが生じます。また、水に長く浸かっていると、皮膚がふやけてバリア機能が弱くなり、もともと目立った傷がなくても細菌が入りやすい状態になります。冠水路から出たら、まず足を洗ってよく乾かしてください。
洪水後に注意したい感染症の1つにレプトスピラ症があります。ネズミなどの動物の尿で汚染された水や土壌から、皮膚の傷や目・口などの粘膜を通して感染します。国内では沖縄県の水辺のレジャーに関連した報告が多く、豪雨や台風による洪水後の発生も各地で報告されています。5~14日ほどの潜伏期間をおいて、発熱、頭痛、筋肉痛、目の充血などで始まり、重症化すると黄疸(おうだん)や腎障害を起こすことがあります。頻度は高くありませんが、「汚れた水に入った」という一言を医師に伝えないと、ただの風邪と見分けがつきにくい感染症です。
破傷風も気をつけたい感染症の1つです。破傷風は菌そのものよりも、菌が傷の中で作る強力な神経毒素によって起こる病気。破傷風菌は芽胞という非常に丈夫な形で世界中の土壌に広く存在しており、傷の奥など酸素が少ない環境に入り込むと発芽・増殖して毒素を作ります。その毒素が神経を伝って中枢側へ移動し、本来なら筋肉の動きを抑える神経の働きを弱めるため、筋肉が「ブレーキの利かない状態」になります。人から人にうつることはなく、あくまでも自分の傷に入り込んだ土や泥が感染源となります。
よく「錆びた釘を踏むと破傷風になる」といわれますが、錆そのものが破傷風の原因ではありません。問題は土や泥に汚染された釘を踏み、深く刺さった傷の奥に酸素の少ない環境ができやすくなることです。したがって、錆びていない釘でも、泥のついた木片でも、条件がそろえばリスクがありますし、そもそもきっかけになった傷を本人が思い出せないということも珍しくありません。
破傷風の潜伏期間は通常3~21日、平均約10日とされます。初期症状として多いのは、あごがこわばって口が開きにくくなる「開口障害」です。その後、飲み込みにくさ、首や背中のこわばり、痛みを伴う全身の筋けいれんが起こり、背中が弓なりに反るほど強くけいれんすることもあります。わずかな音や光、触れる刺激だけでけいれんが誘発されるため、入院中は照明を落とした静かな部屋で治療します。
破傷風が恐ろしいのは、重症でも意識が保たれることです。強い筋けいれんや呼吸困難が起きていても、本人は状況を明確に認識しているため、非常な恐怖と苦痛を伴います。喉や呼吸筋がけいれんすると窒息につながり、人工呼吸器が必要になります。さらに自律神経が不安定になると、脈拍や血圧が乱高下し、命に関わる不整脈を起こすことがあります。けいれんの力があまりに強いため、骨折することもあり、長期の人工呼吸に伴う肺炎も起こります。