Hint-Pot | ヒントポット ―くらしがきらめく ヒントのギフト―

仕事・人生

「心配しなくて大丈夫」と言われたけれど… 知能検査で高い数値が出た女性 医療機関でも届かなかったSOS

公開日:  /  更新日:

著者:古川 諭香

生活でさまざまな困り事を抱えている女性(写真はイメージ)【写真:PIXTA】
生活でさまざまな困り事を抱えている女性(写真はイメージ)【写真:PIXTA】

 IQが高いことは、周囲から見れば「恵まれた才能」に映りがちです。しかし、検査で高い数値が示されても、その人が日常生活で何を感じ、どのような困難を抱えているのかまではわかりません。サキさん(仮名)は精神的不調の治療中に知能検査を受け、本人の記憶によると、言語に関する指標が測定限界の155という高い数値を告げられたといいます。彼女はこれまで、どのような苦悩や違和感に悩んできたのでしょうか。話を伺いました。

 ◇ ◇ ◇

高い知能で隠れてしまうSOS

 サキさんは2020年頃から、うつ病やPTSD(心的外傷後ストレス障害)の治療をするため、精神科に通院し始めました。記憶力や判断力、集中力が以前より落ちたように感じたからです。

「生活を立て直すため、自分がこれまで積み上げてきた能力が変わっていないことを確かめたい気持ちもありました」

 その後、主治医から提案された知能検査や心理検査を受けました。本人の記憶によると、言語に関わる指標は155、動作に関わる指標も130以上という結果を告げられたそうです。

「でも、不安は解消されませんでした。私が知りたかったのは一般的な集団と比べて自分がどの程度できるかではなく、以前の自分から何が変わったのかだったからです」

 サキさんは、以前より認知機能や思考の質が落ちていると感じていました。しかし、検査では高い数値が示されたこともあり、自身が感じている変化や困り事を訴えても、必要としていたサポートにはつながらなかったといいます。

「診察時も医師とはスムーズに会話ができます。認知機能への不安を何度か相談しても、『心配しなくて大丈夫』と言われました。でも、私の中では明らかに記憶力や判断力、集中力、思考の質が以前とは違うという実感があるんです」

 また、サキさんはできない部分があったとしても、別の能力で補い、外からは問題がない、むしろ優れているように見せることができると言います。

「そうできると、周囲だけではなく、自分も『これくらいなら大丈夫なのでは』と、自身の困難を過小評価するようになってしまうんです」

疲労が限界になると丸1日眠る…日常生活に潜む困難

 現在の仕事は複雑な情報を整理し、課題を処理することが求められる職種。サキさんにとっては、自分の力を活かしやすい職種です。

 その一方で、日常生活ではさまざまな困り事があります。例えば、自分ではコントロールできない長時間の睡眠。疲労が限界に達すると、1日中眠り続けてしまい、予定や仕事に影響が出ることがあります。

「起こされても起きられません。昔からの友人は理解してくれますが、パートナーと過ごす時間が削られてしまうなど、迷惑をかけてしまいます」

 また、人との会話でつまずくことも。友人や交際相手に対して「言わなくても私の気持ちをわかってほしい」という欲求が向き、焦ったり、必要な説明を省いたりしてしまうことがあります。

 なお、友人に冗談を言ったときには「意図がきちんと伝わっただろうか」と不安になり、すぐにその意味を説明してしまうこともあるそうです。

「これまでの対人関係で感じてきた他者とのずれを過剰におそれる気持ちは、今も残っています。自分のメンタルが落ち込んだときは友人と話すなど、人を頼って回復しています。SNSで友人の投稿に“いいね”をつけるのも、心の回復につながっています」