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なぜ日本では今でも「ヘンリー王子」と「メーガン妃」と呼ぶのか “王室引退”した夫妻に尊称は必要?
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新型コロナウイルスの感染拡大の影響でロックダウン中にある英国だが、ロイヤルファミリーの話題は尽きない。3月31日で主要王族から離脱したメーガン妃とヘンリー王子についても、英メディアでは連日、記事があふれている。米ロサンゼルスに滞在する2人は現地で慈善活動を行う姿がキャッチされるなど、その後の新しい道を歩んでいるようだが、果たして2人は一般人なのか、それともまだ「王子(プリンス)」と「お妃(プリンセス)」なのだろうか? 日本でも注目される夫妻の呼び方だが、“王室引退”後に、英国の報道で変化はあったのだろうか? 93年に渡英、ロンドン市内の出版社勤務の経験もあり、常に現地の話題や情報の最先端に身を置く英在住のライター・森昌利氏に寄稿してもらった。
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「生得権」があるヘンリー王子 メーガン妃は本来、一般人に戻るのだが…
3月31日の“王室引退”からはや3週間余り。世界中が新型コロナウイルス感染拡大で戦々恐々としている中、それでもメーガン妃とヘンリー王子に対する興味は尽きない。英メディアでは、まさに連日、これでもかというほどに記事があふれている。しかし単純な疑問がある。王室の主要メンバーから離れた今、果たして2人はまだ正式に「王子(プリンス)」と「お妃(プリンセス)」なのか。
実際、お膝元の英国ではどう扱われているのか。今回のコラムではマンチェスター大学で英王室史の講師であるジョナサン・スパングラー博士の解説を参考にして、メーガン妃とヘンリー王子の“現在地”を探ってみたい。
まず、今回の“王室引退”で「ロイヤル」の文言と同時に、2人が使えなくなったタイトルがある。そのタイトルは「HRH」。His/Her Royal Highness(男性の場合は“ヒズ”、女性の場合は“ハー”で始まり、ロイヤル・ハイネスと続く)の略で、日本語では「殿下」「妃殿下」と訳される。現在では王家直系の子孫で、王室の主要メンバーとなった者に与えられるタイトルだ。これは「HRH」の称号を持つ王室メンバーと結婚した配偶者にも与えられる。
つまり、チャールズ皇太子とダイアナ元妃の間に生まれ、将来の国王ウイリアム王子の実弟であるヘンリー王子には自動的に授けられたタイトルであり、メーガン妃もヘンリー王子と結婚したことで「HRH」、日本語で言う「妃殿下」となった。
さて、夫妻は「HRH」のタイトルを使えなくなったが、完全に一般人となったわけではない。ヘンリー王子は「王子」のままなのだ。スパングラー博士の解説では、これは「birthright」(生得権)によるものだという。王家に生まれたものは王室を引退しても「王子」であることは不変で、王位継承権も6位のまま動かない。したがって、“王室引退”後も「ヘンリー王子」と表記して問題がないのである。
ところがメーガン妃の場合は、少し話が違ってくるようだ。ここまでお読みになって勘のいい読者ならお気付きだろうが、メーガン妃は王室のないアメリカの一般家庭に生まれた女性で、ヘンリー王子が持つ「生得権」がない。だからして“王室引退”で「HRH」のタイトルが使用禁止となれば、正式には「お妃」ではなくなってしまう。王室に生まれ落ちていないメーガン妃は、本来なら「一般人」に戻るしかないのだ。
英メディアでは普段から、一般家庭から王家に嫁いできた女性は、例えばキャサリン妃にしても「ケイト・ミドルトン」と、キャサリンの愛称「ケイト」という呼び方と旧姓を組み合わせて表記されることが多い。また、ウイリアム王子の公爵号から「ケンブリッジ公爵夫人」などと呼ばれ記されることもある。メーガン妃もこれまで「メーガン」や「メーガン・マークル」、そして「サセックス公爵夫人」と表記されるのが一般的だった。名前に「プリンセス」を付けて呼ぶことはしない。
つまり、“王室引退”をした後も、これまで通り「メーガン」や「メーガン・マークル」などと記され、英メディアの中ではその呼び方に変化はない。