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なぜ日本では今でも「ヘンリー王子」と「メーガン妃」と呼ぶのか “王室引退”した夫妻に尊称は必要?

公開日:  /  更新日:

著者:森 昌利

ヘンリー王子とメーガン妃【写真:Getty Images】
ヘンリー王子とメーガン妃【写真:Getty Images】

一般人のようで一般人じゃない!? 日本語の「妃」には“王侯の妻”という意味も

 メーガン妃が今、使える称号は「サセックス公爵夫人」だけである。しかし、このコラムでも「依然として『メーガン妃』と表記しているではないか」と鋭い指摘をする読者もいらっしゃるだろう。それは英国の称号に基づいたものではなく、あくまで“日本の慣例”と言えそうだ。

 三省堂大辞林を紐解いてみる。すると「妃」には天皇の配偶者、皇后、中宮、また女御などで天皇の母となった人とあるが、同時に“王侯の妻”という意味もある。ということは、ヘンリー王子に生まれながらに生涯を通じて「プリンス」と名乗る権利があるとすれば、日本ではその王侯の妻に「妃」を敬称として付けるのは間違いではないようだ。つまりヘンリー王子の妻である「メーガン・マークル」はメーガン妃となる。逆を言えば、皇太子と離婚したダイアナ妃は、日本では「元妃」という表記になるし、エリザベス女王の次男アンドリュー王子と離婚したセーラ妃も同様に「元妃」だ。

 これも、皇室という英王室より長い歴史を誇る“インペリアルファミリー”をいただく日本ならではの慣例と言える。アメリカのように王室がない国なら、英国に従い「メーガン」と表記すればいいが、皇室をいただく日本人だからこそ、こうした“ねじれ”も生じるのだろう。

 “王室引退”したというのに「メーガン妃」と呼び続けることに疑問を感じる方々も少なからずいると思うが、それは自国に歴史ある皇室が存在し、王族に嫁いだ女性を「妃」と呼ぶ日本に独特の慣例があるが故だろう。それに平民出身とはいえ、一度王家に嫁いだ女性を「メーガン」と呼び捨てにするのも、ファーストネームで互いを呼び合う文化がない日本人にとっては気が引けることもあるのかもしれない。

「HRH」は剥奪されたわけでもなく返上したわけでもなく、使えない状態。そして生まれながらにしての王子とその妻の“引退”。一般人のようで一般人ではない……。今後もヘンリー王子の妻である限り、日本では「メーガン妃」と記され続けるのではないだろうか。

(イギリス・森昌利/Masatoshi Mori)