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「古着の裾マスク」を政府が推奨 現地記者が語る マスク不要論が根強かったイギリスの今
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ボリス・ジョンソン英首相は現地時間11日、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために、電車内や店内などでは手作りマスクなどを着用するように国民へ呼び掛けた。外出禁止措置が段階的に緩和することに伴ったものだ。日本では当たり前となっているマスクだが、英政府はこれまで着用に否定的だった。しかし、一転して公式サイトでTシャツなど古着を活用したマスクの作り方を公開して話題になっている。英国ではマスクが品薄状態でその解消として古着リメイクを推奨した形だ。93年から英国に住むジャーナリストの森昌利氏が現地リポートする。
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ロックダウンの段階的緩和の1つとして 品薄対策にも
英国は新型コロナウイルス感染による死者が3万2000人を超え、米国に次ぎ世界で2番目に多い。しかし「流行のピークは過ぎた」としてジョンソン首相は、これまで感染対策として行っていたロックダウン(都市封鎖)を条件付きで緩和させて、経済を再開させる計画を明らかにした。具体的な緩和の内容は割愛するが、簡単な一例としては屋外での運動が1日1回という制限の中で生活していたイングランドの一般市民は、今後はより長い時間、屋外に出ることが可能となるなど、外出しやすい環境になる。
その緩和に伴い、政府から1つ奨励されることがあった。それは「手作りマスク」だ。ここ、英国には元々マスクを着ける習慣はない。医療関係者やヘルスケアなどの従事者はもちろん着用しているが、この新型コロナ禍でも一般市民のマスク姿というのは、たまに見かけるくらいで、しない人はまだ多いように感じる。
筆者は93年から英国に住んでいるが、マスクを買ったことがない。実際のところ、どこにマスクが売っているか、今まで気にしたこともなかった。風邪をひいたり、花粉症などのアレルギーだったりしても、そのまま気にせず、くしゃみや咳を盛大にしていた人が多いように思える。
個人的な見解だが、英国では「マスクをしている人」に、「不気味」な印象を持っているように感じる。鼻や口元を隠して、目しか出ていないことに、「何かやましいことがあるのではないか」とネガティブにとらえ、警戒心を持つような文化があるように思う。直射日光から守るためにサングラスをかけて「目を隠す」ことには抵抗はないようだが……。
日本では、天皇ご夫妻や首相、知事といった公人もマスクをしている姿を見るが、こちらでは首相を始め、官僚、もちろんロイヤルファミリーのマスク着用の姿を見たことはない。先日、“王室引退”したヘンリー王子とメーガン妃が、ロックダウン中の米ロサンゼルスでマスク代わりにバンダナを巻いて犬の散歩をしている様子が報じられたが、あの姿は、英国人から見て「極めてレアな姿」に映ったと言える。日本でよく放送されている、ほぼ全員がマスク姿で通勤する主要駅の風景を、もし英国人が見たら、「奇妙」に思う人は少なくはないだろう。