国内ニュース
“コロナ離婚”が頭をよぎった時は… リフレッシュ法や「Iメッセージ」を活用 夫婦間の危機を乗り越える
公開日: / 更新日:
教えてくれた人:大手前大学 現代社会学部准教授・武藤 麻美
新型コロナウイルスによる外出自粛生活が長引く中、これまでの生活の中でここまで時間を共有することがなかった2人の間に亀裂が入ってしまった……という夫婦も少なくないことでしょう。「今すぐ離婚!」と急いてしまう前に、どう切り替えれば“コロナ離婚”から脱却できるのか。心理学を専門とする、大手前大学現代社会学部准教授、武藤麻美先生に聞きました。
◇ ◇ ◇
心理学の専門家に聞いた “コロナ離婚”の原因は大きく2つ
夫婦仲が悪くなる原因の1つとして、元々潜在的に存在していた“夫婦間の葛藤”が、在宅勤務の増加や休校、外出自粛などによって浮き彫りになってきたことが考えられます。なお、この“夫婦間の葛藤”の原因として考えられることは、下記の2点です。
まず1点目は、在宅勤務が増えたことで、性別役割分業の持つマイナス面が顕在化してしまうため。
共働き家庭の女性も、専業主婦の場合も、休校やテレワークにより子どもや夫が家にいることで、例えば3食きっちり用意しなければならなかったり、育児に割く時間が増えてしまったりと、通常時よりも負担がかかっています。
これまでに話し合いの場をきちんと持ち、夫婦の役割分業が平等(対等)なカップルであれば、基本的にそう大きく関係性は変わらず、逆に互いに不安と緊張をほぐし合うことが可能でしょう。
しかし、元々どちらかに家事・育児等の比重がかかっていた夫婦の場合、在宅や休校による影響で余計に比重がかかり、精神的な不満が蓄積。体力的にも限界を突破してしまい「離婚するしかないかも……」と、問題が深刻化しているのではないでしょうか。
続いて2点目ですが、夫婦それぞれが感じているパーソナルスペース(心理的な縄張り)を、思うように確保できないことから“フラストレーション”が溜まってしまっていると考えられます。
パンデミックが起きる前は、男性が働きに出ること、または共働きをしていたことで、自然に適度な心理的距離が取れていました。日中は別々の空間や時間を過ごし、自分のペースやリズムを確保し、精神的な安定やバランスを取ることができていたと考えられます。
しかし、コロナ禍によって急激な生活環境の変化が起き、同じ環境下にとどまらないといけなくなり、パーソナルスペースを確保できず、生活のリズムも狂うことになりました。こうしたことから不満が溜まってケンカや暴力などを引き起こし、関係性の破綻につながっているのではないかと考えられます。
今こそ夫婦のあり方や役割分担を見直すべき
今回、在宅勤務が増えたことを、夫婦関係を見直すきっかけにしてほしいと思います。家庭内の男女(夫婦)のあり方や役割分担を再考する機会にしてみましょう。これまで夫婦が顔を合わせる時間があまりなかった夫婦であればなおさらのこと。この機会をチャンスに変え、喧嘩にならない程度に今後の家事・育児分担について話し合うことで、“コロナ離婚”を回避する対策になると思います。
ちなみに、各自が持っている「性役割態度(ジェンダー観)」も、夫婦の関係性に影響すると言えます。
例えば伝統主義的な性役割態度を持つ人は、男性の居場所は職場で、女性の居場所は家庭であるといった考え方や、家事や育児は女性が担うべきといった考え方を強く持っています。
一方、平等主義的な性役割態度を持つ人は、男女は平等であると考えており、家事や育児を女性(妻)の役割と限定して考えない人と言えます。
お互いの「性役割態度」がどのようなものなのか、これを話し合って知ることも重要であると言えるでしょう。
ただし、これらは、各自がこれまでの生活(人生)の中で長期間かけて身に付けてきた価値観であるため、「変えてほしい!」と思っても容易には変化しません。お互いに相手の「性役割態度」を尊重した上で、どこまで歩み寄ることができ、どこから譲ることができないのか、話し合うことが大事なのです。