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仕事・人生

認知症が進み排便コントロールが利かなくなった父 残された母とともに試行錯誤の日々 気付かされた最も大切なこととは

公開日:  /  更新日:

著者:和栗 恵

介護の第一歩とは 家族である自分に何ができるかを考える

 過日、私を導いてくれたあの父が、自身の糞便を垂れ流すほどに悪化している――。

 そんな父の状態を現実として受け止めるのはなかなかに難しく、できれば聞かなかったことにしたかった。そんな想いが頭をよぎりました。

 しかし、そうもいきません。

 いっそのこと“おむつ”を利用した方がいいかもしれない、そう思い看護師さんに尋ねてみたところ、まだ“おむつ”を使うほどではないとのこと。であれば、私にできることは父の現状を嘆くことではなく、父を支える土台である母に負担をかけないことしかありません。

 そこで母と相談。父の着替え用ズボン(ウエストにゴムが入っていて、紐のないもの)を安価な店で多数買い揃えて母に送りました。また、パンツなどは100円均一で大量に買うよう提案をしました。

 こうすることで、汚れがひどい場合はそのまま破棄させ、母に心理的&物理的な負担がかからないように配慮をしたのです(洗濯を代わってあげることができればそれが一番良いのでしょうが、新型コロナの影響もあり、電車に乗って都心から実家まで通う……というのは、母に感染のリスクを負わせることにもなるので、できませんでした)。

 すぐ目の前にあるのは「父」の問題ですが、初めに書かせていただいたように、残念ながら健康寿命は女性と男性で2年ほどしか変わりません。すなわち、「母」の今後も並行して考えなければならないのです。父の介護で母に大きな負担をかけ続けてしまった結果、母が倒れたりボケたりしたら元も子もありません。そうなれば、今後の自分たちの生活も大きくマイナスに変わってしまいます。

 幸いにも父は病院で、お医者さんや看護師さんといったプロの手で守られています。確実に手をかけなければいけないもの、それは、先にも言いましたが「母」の方なのです。

 自分は今、誰に対し、何ができるのか?

 父の悪化の知らせを受けて、これを考えることが何よりも大切なのだと痛感しました。広い視野を持って、お金で解決できることはそれで解決し、解決できない部分はサポートを行う。父だけ見て正しいことではなく、全体を見て正しい方向に進む道を考える。こうしたことが、高齢者の今後に向き合う上で必要なのです。

 私と同様、いえ、それ以上に大変な介護問題を抱え、やり切れない想いを抱えている方もきっと多いことでしょう。家族の、そして自分の未来にとって何が最良の道か――ぜひ一緒に考えていきましょう。

(和栗 恵)