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里帰りや立ち会い出産の不可 夫の育児参加を早めるきっかけに 産後ケアのプロが教えるデメリットばかりではない理由
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教えてくれた人:米山 万里枝
各自治体で近年、急速に進んでいる「産後ケア」事業――主に、出産後1年を経過しない女性と乳児に対して、心身のケアや育児のサポートを行うことですが、今回のコロナ禍で改めてその重要性に注目が集まっています。2018年4月に「産後ケア研究センター」を立ち上げ、母児支援に取り組む、東京医療保健大学 医療保健学部の米山万里枝教授は、緊急事態宣言発令後も変わらず、電話相談を中心に出産後の母親たちが抱える多くの悩みに応えてきました。里帰りや立ち会い出産ができないことはデメリットばかりなのでしょうか。今後、妊娠出産をする女性へのメッセージをお聞きしました。
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相談時間は倍に 表れる母親たちの潜在的な不安
4月の緊急事態宣言発令前後から、全国で立ち会い出産の禁止や面会規制、母親・両親学級などの中止による妊産婦の戸惑いの声は、度々報道されました。また、日本の女性の里帰り出産経験者は約6割と言われる中、里帰り出産受け入れ拒否や自粛要請は社会問題になっています。
現在、これらの措置は一時より緩和されつつありますが、ある調査では第2子以降の妊娠希望者の約3割が妊娠計画を「延期」または「諦める」と回答。新型コロナウイルス感染拡大は、妊娠や出産に暗い影を落としていることが分かります。
米山教授が運営する「産後ケア研究センター」では、2018年の立ち上げ以降、日帰り型・訪問型・電話相談の3種類の方法で、産後1年までの母子をサポートしてきました。
同センターは品川区と事業連携しており、日帰り型と訪問型は品川区在住者に限りますが、コロナ禍以前は予約受付開始日である毎月1日に1~2時間で予約が埋まってしまうほど、問い合わせが殺到していたそうです。しかし、感染症の蔓延に伴い、4月中旬から緊急事態宣言解除までは、日帰り型は中止を余儀なくされました(現在は再開)。
その一方で、訪問型と電話相談は宣言後も引き続き受け付け、訪問型は多少減少したとはいえ月に40~50件ほど。電話相談は変わらず月100件前後に及びました。受けられる件数には限りがあるため、問い合わせ数に大きな変化は見られませんでしたが「1件、1件の相談時間は倍になりました」と米山教授。
相談内容の多くは、以前と同じく授乳に関することなどだったようですが、この相談時間の変化にこそ、母親たちの潜在的な不安が表れていると言えます。