育児・家族

両親の介護のために会社を退職 50代独身男性の苦悩と疲弊 「人生がすべて狂いました…」

著者:和栗 恵

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お世話をしている母親からの心ない振る舞いに疲弊

 しかし、佳一さんの悩みは金銭的な不安だけではありません。現在、大きな悩みの種になっているのは、転んで腰を傷めたことがある母親のことでした。

「すでに完治して動くことができるはずなのに、ベッドの上に寝たきりになり『身動きを取ることができない』と言い張っています。そのため、何か用事があると私を呼び出すのですが、枕元に用意してあるステッキを使って、壁やタンスをバンバン叩くんです」

 名前を呼んでくれれば聞こえるから「ステッキで叩くのはやめてくれ」と、母親に対して何度もお願いしているといいますが、認知症のせいもあって叩くのをやめてくれません。一度ステッキを母親のベッドから離してみたそうですが、狂ったように騒ぎ出してしまい、取り上げるのは断念したことも。

「深夜であろうと、早朝であろうと、母は何か少しでも不満があると、ステッキをガツンガツンと家具にぶつけ、私を呼ぶんです。もう、あの音が怖くて怖くて……」

 朝起きてすぐに朝食を作り、2階と1階、別々で寝ている両親の部屋を回って食事をさせることから、佳一さんの1日が始まります。

「入浴は週に数回、ケアセンターへ行っています。しかし、その日以外は2人を着替えさせ、昼食を作り、食べさせ、掃除をし、夕食の準備をし……と、丸々1日が介護に費やされてしまっています。私1人の時間が取れないこともつらさを倍増させている気がしますね」

 佳一さんは趣味だったゴルフにも、この5年間1度も行けておらず、テレビをゆっくり見たり、理容室に行くのでさえも半年に1度がやっとだといいます。

「両親を放って逃げ出したい。どこか遠くに行きたい。何なら、今すぐにでも自分が死んでしまえたらどんなに楽だろうと、そう思うこともあります。でも、ここまで育ててもらった恩もあり、どんなにつらくても見捨てられないのが現状です」

 佳一さんは自分なりに誠心誠意、頑張って介護をしていますが「気配りが足りない」と母親からは面倒を見る度に罵倒され、追い詰められている様子。単身者介護は孤立しやすいと言われており、佳一さんもそういった状態に陥っているようです。

 生きがいやアイデンティティの維持のためにも、就労が継続しやすいよう介護休業制度の見直しや、単身介護者を手厚くサポートできるような仕組み作りを、各自治体が少しでも早く行ってくれることを願ってやみません。

(和栗 恵)