インタビュー

大災害を一緒に乗り越えた愛犬と現役プロサッカー選手の絆 10年目に考えるこれからのこと

著者:Hint-Pot編集部

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未曽有の大地震 震えて待つ愛犬を必死に救出

プレー中の中島裕希選手【写真:FC町田ゼルビア】
プレー中の中島裕希選手【写真:FC町田ゼルビア】

 中島選手はモコちゃんに対して本当の子どものように接し、ちょっと皮膚が赤くなるだけでも心配でたまらず病院に駆け込むなど、手塩にかけて育ててきました。しかし、お迎えから1年も経たずに大事件が起こります。それは、9年前の東日本大震災でした。

 当時、宮城県仙台市にあるチームへ所属していた中島選手は、その日外出先で被災。真っ先に頭をよぎったのは、奥さんと自宅に残したモコちゃんの安否でした。その日は奥さんもちょうど外出しており、携帯電話が通じず連絡が取れなかったため、とにかく自宅へ向かうことに。するとちょうど帰ってきた奥さんと自宅の高層マンション前で遭遇し、お互いの無事を確認し合うことができたそうです。

 後は家に残したモコちゃんの無事を祈るばかり。奥さんには安全な場所で待機してもらい、中島選手は1人で、29階にある自宅で待つモコちゃんを救出しに行くことにしました。普段から、プロアスリートとして身体を鍛え抜いている中島選手ですが、全速力で階段を駆け上がるのは本当に大変だったといいます。

 ようやく29階へたどり着き玄関に入ると、目の前には恐ろしい光景が広がっていました。奥さんと一緒に揃えた家具や、重たい冷蔵庫さえも倒れ、室内は見るも無残な状態に。もし、小さなモコちゃんが下敷きになればひとたまりもありません。幸いなことにモコちゃんはリビングのソファの上に座り、震えながら中島選手を待っていたそうです。

「あの大きな地震の後も余震が続いていたので、相当怖かったはずです」と中島選手。モコちゃんとの再会にほっと一安心をするも、息つく暇もなくすぐにモコちゃんを抱え、さっき上がってきたばかりの階段を駆け下りました。

 こうして家族全員、無事に集まることができましたが、その晩は車の中で一夜を明かすことに。その後、奥さんはモコちゃんを連れて実家に帰ることができ、中島選手はチームメイトとともに仙台に残りました。たまたま無事だった一軒家に住むチームメイトの元へ身を寄せ、1か月ほどは奥さんとモコちゃんと離れ離れで暮らしたと言います。

 1か月後、ようやく再会したモコちゃんは、以前と変わらず全身で喜びを表現しながら近付いてきてくれました。しかし、急に触ろうとするとびっくりしたり、急に怯えたりとしばらくは落ち着かない様子だったそう。地震の影響の大きさを改めて感じました。

老化と上手に付き合いながら これからもずっと一緒に

 現在では、すっかり怯える様子もなくなったというモコちゃん。10歳になり高齢期に入ってきたので、最近では散歩もモコちゃんの気分に合わせているそう。散歩帰りには少々疲れてしまい、中島選手の長女のベビーカーへ一緒に乗って帰って来ることもしばしばあるのだとか。また、少し白内障の症状も出始めていますが、上手に付き合っていこうと考えているそうです。

 今でも中島選手が帰ってくれば一番にお出迎えをしてくれて、出かける時には一番名残惜しんでくれるというモコちゃん。中島選手の長男とパパの取り合いをすることも、日常の一部なのだそうです。

「毎晩、一緒に寝ているのですが、ピタッとくっついてきてくれて。その姿を見ていると『よし! 頑張ろう』と思えますね」

 練習でクタクタになった時も、試合で勝ってうれしい時も、どんな時も気持ちを共有してきたモコちゃんは、中島選手の心を幸せでいっぱいに満たしてくれる、まさにベストフレンド。

「これから先もずっと一緒にいてね、モコちゃん」

(Hint-Pot編集部)