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帰省自粛の夏 「入院中の母に一目でも会いたいだけ」 48歳女性の葛藤
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病院で泣き暮らす母の様子を聞き悩みは増す一方
兄は妻と子ども2人の4人家族。めぐみさんにとって義姉に当たる義姉とは同い年ということもあって関係は良好でしたが、母親の入所の一件で兄がめぐみさんのことを悪く言い始めたのを機に、何となく疎遠になっていきました。ところが、普段の母の見舞いなどを兄が妻任せにしていることを知っているめぐみさんは、義姉に恩義を感じていました。
その義姉から直接、めぐみさんの元へ電話がかかってきたそうです。
「母が涙を浮かべながら、何度も何度も私の名前を呼ぶと言うんです。めぐみに会いたい、めぐみに謝りたい、って言っていると。義姉は、見るに見かねて私に連絡をしてきました。会っていないうちに母の様子はかなり悪くなっていて、もって1年、早ければ数か月だろうと。コロナ禍で、実家の方の見舞いは原則禁止で一定の制限があるようですが、毎日懇願して泣いているようで。義姉から『せめて5分でいいから、会ってあげてほしい』と言われました」
義姉が先日、病院に様子を見にいくと、娘のめぐみさんと勘違いしたお母さんが手を握ってきたそうです。「娘が来てくれた、めぐみ、めぐみ。会いたかった……」と涙を流し、ずっと「ごめんね、ごめんね」と謝り続けたという母。義姉はもちろん、居合わせたスタッフも母の勘違いを否定することはできず「良かったわねぇ、娘さんが来てくれて。ずっと会いたがっていたもんね」と言ったといいます。
その話を聞き、めぐみさんは涙が止まらなくなったそうです。義姉も電話の向こうで泣いていました。「兄に怒りはありますが、義姉には心から申し訳なく、感謝の気持ちでいっぱいです。本当は私が東京の家の近くの施設で引き取れれば良かったんですけど、状況も金銭的にも厳しくて……」
そして、お盆休みを前に全国で新型コロナウイルスの感染者が急増し、各地で要請された「帰省自粛」。帰るべきか、帰らないべきか……。お盆休みに入ったのに、めぐみさんは未だ、葛藤に苦しみ、身動きが取れない状態だと悩んでいます。
「もし自分が新型コロナウイルスに無症状で感染しているとしたら、そして私の帰省が兄や親戚に知られたらと思うと、帰省しない方が良いのかとも考えます。ただ、私は母に会いたいです。もしものことがある前に。せめて一目だけでも会いたいんです」
今回の帰省を見送ったとしても、コロナ禍が収束するのか分からないため、タイミングを計りかねているというめぐみさん。いつになれば母と会えるのかと、ため息が止まりません。
(和栗 恵)