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トラウマ児童文学や直木賞作品も プロの文筆家がおすすめする「親子で読みたい本」3選
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今年は、特別な夏です。外出を自粛し、在宅で過ごすご家庭も多いでしょう。夏は知的好奇心を刺激するのにぴったりな季節。親子で同じ本を読んで、それぞれの感想を話してみるのも、忘れられない思い出になるかもしれません。どんな本が良いでしょうか? 13年間の闘病生活で、代表作「変身」で知られるフランツ・カフカの言葉が救いとなった経験から文筆家になり、著作物の出版やラジオ出演など幅広く活躍する、文学紹介者の頭木弘樹氏に「親子で読みたい本」について寄稿していただきました。
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文学紹介者の頭木氏がおすすめ 少し背伸びして直木賞小説も
暑い夏は、読書に向かないようにも思えます。でも不思議と、夏の読書は一生の思い出に残ることがあります。
強い日差し、したたる汗、日陰、青空、セミの声……そんな情景とともに、本をめくった子ども頃の自分の姿が、大人になってからもふとよみがえったり……。親子で同じ本を読んで、それぞれに感じたことを語れば、後々までかけがえのない思い出となるかもしれません。
この夏、特におすすめの3冊をご紹介します。
○「少年と犬」馳 星周・著(文藝春秋)
7月に第163回直木賞を受賞したばかりの小説です。子ども向けの本ではありませんが、夏は成長の季節でもあります。少し背伸びをして、直木賞受賞作に挑戦してみるのもいいのでは。
東日本大震災で飼い主を失った犬が、仙台、富山、滋賀、島根、九州・熊本と壮大な旅をします。そして、その先々で、さまざまな事情を抱えた人たちと出逢います。さまよう犬と、傷付いた人間が出会う時、そこには特別な物語が生まれます。
それぞれの心に寄り添っていく犬……。動物が出てくるので子どもにもとっつきやすく、悲しみも描かれますが、温かさがあり、最後には震えるような感動が待っています。
作者の馳 星周さんは大型犬と25年も一緒に暮らしているそうです。犬のために、東京から軽井沢に引っ越しもされたそう。
私も子どもの頃、犬を飼っていましたが、噛まれてばかりで、実はあまりいい思い出はありません。それでも、子どもの頃の動物とのつながりというのは、大人になってからとはまた違う、特別なものがあります。
小説の中だけでも、ぜひ動物との心のふれあいを体験してほしいです。