インタビュー

元「NHKニュース7」気象担当の半井小絵さんが語る 災害時に個人がやっておくべきこと

著者:中野 裕子

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あくまで傾向 予測ができないことだからこそ各自に合った備えを

各自に合った備えが必要と語る半井小絵さん【写真:荒川祐史】
各自に合った備えが必要と語る半井小絵さん【写真:荒川祐史】

 ちなみに、2020年の災害の傾向や予測は見積もれるものなのだろうか。もしできるのなら、心づもりがしやすいが……。

「近年、“令和2年7月豪雨”“令和元年房総半島台風”“令和元年東日本台風”など、風や雨による大きな災害が毎年のように発生していますが、そこから単純に『2020年も台風が多く発生し、上陸するだろう』などといった傾向を導き出すことはできません。台風の進路はその時の気圧配置に大きく左右されるからです。太平洋高気圧の勢力や上空の強い西風(偏西風)の位置によって変わってきます」

「また、気象庁は9月10日にラニーニャ現象(南米ペルー沖の海面水温が平年より低い状態)が発生したとみられる、と発表しました。統計では、ラニーニャ現象が発生した秋は西日本を中心に気温は高めで、降水量は少ない傾向にあります。だからといって2020年の秋もその傾向通りになるかというと、あくまでも傾向であってさまざまな事象によって変わってきますので、確かなことは言えないのです」

 予測ができないからこそ、備えは大切、というわけだ。

活用してほしいサイトやアプリ 日頃から「気象を予測する」習慣を

 予測が難しく、備えはさまざまだからこそ、半井さんが「皆さんにぜひ活用してほしい」と考えているのは“気象の実況サイト”だ。

「実況サイトやアプリはいろんなものがありますが、雨雲レーダーなど1時間ごとなどで時間を追って動きが見られるもの、さらに予測も見られるものがおすすめです。ご自身が住んでいる地域が今どういう状況で、今後どうなるかが予測できるので、それによって備えることができるからです」

 例えば「『洪水警報の危険度分布(気象庁)』では大河川だけでなく、中小の河川の危険度も色分けで示されています。近所の川の水位が気になるからといってわざわざ見に行かなくても、今、近所の川の状況がどうなっているか分かるのです」

 緊急時にだけ使うのではなく、日頃からチェックして今後の気象を予測する習慣を付けておけば、いざという時に役立てることができる。

「インターネットやアプリを使えない高齢の親御さんがいらっしゃる方は、その地域についてもチェックして、電話などで知らせてあげてもいいと思います」

 ちなみに、半井さんが普段利用しているのは気象庁の「高解像度降水ナウキャスト」だ。

警戒レベル5はすでに災害が発生している可能性も 意味を正しく理解して

 半井さんが活動している日本災害情報学会では、この5月、「避難に関する提言」を出している。ポイントは3つ。避難所以外の避難(分散避難)も選択肢であること、あらかじめハザードマップ・防災マップなどで危険の有無や程度を確認しておくこと、大雨警戒レベルの意味を正しく理解しておくことだという。

「危険度を示す警戒レベルは5段階あって、レベル5はすでに災害が発生している可能性が極めて高く、命を守る最善の行動を取る必要があるレベル。ですからレベル5になるのを待たずに、レベル4の段階で、リスクのある地域にいる人は全員避難すると覚えておいていただきたいです。ご自身のいる場所がリスクのある地域かどうかは、事前にハザードマップなどで確認しておいてください」

 日頃から情報収集とイメージトレーニングを心がけることが、備えの基本になる。

◇半井小絵(なからい・さえ)
1972年12月26日、兵庫県伊丹市生まれ。日本銀行在職中の2001年、気象予報士試験に合格し気象会社へ転職。2002年、オーディションを受けNHKの関東・甲信越ローカルの気象情報を担当し始め、2004~2011年は「NHKニュース7」の気象情報を担当し“午後7時28分の恋人”と高い人気を得た。2017年、拉致問題啓発舞台劇「めぐみへの誓い―奪還」で女優デビュー。その他、講演や司会、コラムの執筆などを行っている。

【出演情報】
・YouTubeドラマ「空と山と緑」配信中(カートチャンネル

・政府拉致問題対策本部主催舞台劇公演「めぐみへの誓い―奪還」
  青森公演:10月27日(火)リンクモア平安閣市民ホール 田口八重子さん役で出演

(中野 裕子)