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「何であいつだけ!」―実録・コロナ禍が生んだ闇 “ロックダウンジェラシー”が止められない人々

公開日:  /  更新日:

著者:和栗 恵

暇つぶしのはずのSNSチェックが思わぬ事態に!?(写真はイメージ)【写真:写真AC】
暇つぶしのはずのSNSチェックが思わぬ事態に!?(写真はイメージ)【写真:写真AC】

 生活様式が一変し、「ロックダウンジェラシー(Lockdown Jealousy)」という、新しい言葉が生まれました。これは、自宅待機が長引く中、暇つぶしのために他人のSNSやYouTube等を見ることが増え、他人の行動の一つひとつに対し、嫉妬や羨望の感情を抱いてしまうことを意味します。プレッシャーやストレスを感じた場合は、早めに改善を。知らず知らずのうちに、心に深い闇を抱えてしまったという男女に話を聞きました。

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友人たちのSNS見るのがやめられない! シングルマザーが抱える負の連鎖

「自分の中にある醜い気持ちが止められないんです」

 関東在住の三奈子さん(仮名・39歳)は、重い口を開きました。これまで“当たり前”だったことが大きく制限されるようになり、自粛生活を続けているうちに「出かける人」に対して嫉妬が止まらなくなってしまったといいます。

 三奈子さんは、小学2年生の息子とともに暮らすシングルマザー。元夫とは2年前に離婚しました。離婚の理由はいわゆる価値観の相違。互いに対する恨みなどはなく、離婚後も時々元夫と3人で会っては外食や遊園地に出かけるなど、息子の父母としての関係は持ち続けてきたそうです。

 しかし、新型コロナウイルスの蔓延を境に、定期的に会っていた元夫とは気軽に会うことができなくなってしまいました。また、長期にわたる休校により、息子が落ち込みがちになってしまったといいます。

「同じ頃でしょうか。私自身も気分が沈む日が増え、同時に、他人に対する嫉妬心が止められなくなってしまいました」

 息子の学校が再開されてからも、極力出歩くこともなく、親子揃って家で過ごしていたという三奈子さん。いつしかコロナ禍以前よりも頻繁に、学生時代の友人やママ友のSNSばかりを見るようになっていたといいます。

 そして、少しずつ生活ペースを取り戻し、感染対策をしながら家族でレジャーに訪れ幸せに笑っている友人たちの投稿を見る度に、心の中にどす黒いものが溜まっていきました。

「最初のうちは『嫉妬なんかしちゃダメだ』と自分に言い聞かせていました。でも、5月が過ぎ、夏が来て、8月に入った頃には、自分の心の制御が利かなくなってしまいました」

 見るのをやめればいいと思いながらも、自宅で過ごす時間が多いため気が付くとSNSを開いてしまうそう。最近、一番ショックだったのは、シングルマザー同士で仲良くしていた友達に彼氏ができたことでした。

「彼氏とのデートについての投稿を見た時には『何、彼氏なんて作ってんだよ! 自粛してろよ!!』って……。苦しくなってしまいました」

 三奈子さんは1度、どうしても気持ちが抑え切れず、捨てアカ(架空の人物のふりをしたアカウント)を取得して、友人の気に入らない投稿に対し『おとなしくしてろ!』と書き込んだこともあるそう。

「書き込んだ時は私ってばれたらどうしようってドキドキする反面、言いたいことを言えてどこかすっきりしたんです。その後、私はこんな醜い心を持った人間じゃなかったのに……と自己嫌悪に陥って、それ以来その捨てアカは使ってはいないのですが……」