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先生が旅先から授業も コロナ禍のアメリカ中学校生活 その大らかさに日本人女性が気付いたこと
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これからの時代に必要な「環境エンジニアリング」 授業の実際は?
娘の在籍する学校は「エンジニアリング」と「音楽」に力を入れています。長女は本人の希望で、「環境エンジニアリング」の授業を取りました。主人がデザインエンジニアであることが影響しているのかもしれません。
必修ではなく選択科目のため朝早い0時限の受講です。娘に聞くと、「環境エンジニアリング」とは“エコ”や“省エネ”を考慮してものづくりをしたり、システムを開発したりすることのようで、クリーン技術を生み出すのが目的だそう。
言葉で表現するととても堅苦しいですが、授業中にやっていることはとてもお茶目で、見ているこちらも楽しい内容です。現在はネズミ捕りを使ってミニカーを作成中。クリーンな動力を使う実験をしています。
パソコン上で3Dのデザインを起こし、ブループリントと呼ばれる設計図を元に、工具と材料で実際に高速ミニカーを完成させるようです。
アメリカでは小学校の頃から、プログラミングや専用のソフトウェアを使った学習があり、使いこなしている子どもたちを見るととても驚かされます。そして、そのアイデアにも! 可能性が無限のこの時期、こういった環境に子どもがいることこそ、「環境エンジニアリング」なのでは! と思うのです。
必修科目の「音楽」 オーケストラで演奏する楽器を選択
長女の学校でもう1つ力を入れているのは、音楽です。アメリカでは「オープンハウス」と呼ばれる一般公開日があり、学生以外の人が校内を見学できます。前年、我が家も家族みんなで学校を訪問しました。
その際に娘は、マーチングバンドとオーケストラの演奏を観て感銘を受け、今年はオーケストラの授業を選択。1年目は弦楽器を学ぶため、バイオリンとビオラ、チェロ、ベースの中から楽器を選ぶことになりました。娘はいろいろな音楽を聴いた上で、現代最高峰のチェロ奏者ヨーヨー・マの音楽にとても興味を持ち、チェロを学ぶことに決めました。
学校へ楽器のサイズ合わせに行く際も、一番乗りです。家族全員、チェロに興味津々で待ち切れないほど。その夜は家族でかわるがわる音を鳴らしました。
オーケストラの授業は、本来であれば学校に通ってクラスのみんなと演奏するもの。コロナ禍のため全生徒で一緒の演奏はお預け状態ですが、こんな風に家族で娘を囲み、実際に練習風景を見たり、楽譜を読むのを助け合ったり、奏でたチェロの奥深い音が窓ガラスを震わせるこの特別な環境に、私はこの上ない幸せを感じています。
授業は好きな場所から 大らかな教師陣に感謝
そして、最後に1つ。長女の授業風景を見守る私が、個人的に好きだなと思った光景があります。
それは学校の先生が自分の誕生日に、彼がずっと行きたかった場所から授業を行ったこと。背景はきれいな山。滞在しているホテルのバルコニーからオンライン授業を配信していました。「先生、お誕生日おめでとう」。生徒から祝福され、「60になるよ」と照れる先生。
この状況に対して、いろいろな考え方があるかと思います。「仕事が終わってから行くべきだ」と思う方も、もちろんいらっしゃるでしょう。
ただ、私は学ぶ側も伝える側も、お互いが心地よい時間を過ごし、信頼関係が保てることを大切にしたいと思っています。どんな場所からでも、どんな状況にいても、与えられた時間や条件の中で精一杯やる。今回の授業を隣で見ていて、少なくとも娘にはこれが良い方向に伝わっていると感じました。
車の中から移動しながら授業を受ける子や、家族とのバケーションを過ごすために金曜日から海にキャンプに行き、ビーチで授業を受ける子もいます。
学校や先生にもよりますが、娘の学校では基本的に、授業の際に「ベッドに横たわっていなければ出席」とみなす先生が多くいるようです。私はこの大らかさが、これまでのような自由が利かないパンデミックの今だからこそ、子どもたちの心に少しホッとするゆとりを作っているのではないかと思います。
未来へ向けて確実に変わっている学びと生活のスタイル。今日も変わらず裏庭でブーブー、コケコッコーの鳴き声が飛び交うロサンゼルスの小さな家よりお届けしました。
(小田島 勢子)