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お年玉を電子マネーで催促されて…戸惑う高齢者の本音 「もらう立場の人が言う言葉?」
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息子の育て方間違った…? キャッシュレス化でできた心の溝
「インターネットの通信販売すらやったことないし、クレジットカードも持ったことがない。そんな状態にあるのに、孫のお年玉を『キャッシュレスにして』と言われても……」
戸惑いを隠せないのは、関東在住の治代さん(77歳・仮名)。認知症のご主人をようやく介護施設に入れ、ホッとひと息ついていたところにコロナ禍が襲い、心穏やかな日々の訪れを願ってやまない毎日を送っているといいます。
「先日、地方にいる息子から電話が来てね。『今年はそっちに帰らないから』って言われたんですよ。それはもう、この状況なので仕方ないかなとは思うんです。寂しいけれど、私自身、夫の見舞いすらままならない状態ですから。でもね、『お年玉は電子マネーで送ってくれればいいから』って言われて、夫や私のことを心配するより先に、お年玉の催促かと、がっかりしてしまって……」
テレビのニュースで、国がキャッシュレス化を進めていることは知っていたという治代さん。しかし、本人はこれまでクレジットカードを持ったこともなく、携帯電話も持たない生活。しかも、キャッシュレス決済で不正や不備があったというニュースや、クレジットカードの個人情報漏洩の報道など、聞いているだけで恐怖感は増す一方だといいます。
実際に暮らしていく上で、現金のままで不満はないどころか、きちんと家計簿をつけて可視化できているそう。困ることは何もない状態のため、今後もこのまま過ごしていく予定だと治代さん。
「そもそもね、夫の施設代で支給される年金の7割が消えるので、正直なところ私1人が生活するのでやっとな状態。固定資産税などは貯金を崩して支払っている状況なんですよ。息子はそうしたことには考えも及ばないんでしょうね。息子には家族があるので、こちらに仕送りしろとは言えないですが、お年玉の催促で『子育てを間違えたなぁ』と反省しているところです」
「キャッシュレスにしたい人はすればいい。したくない人に強要するのはやめてほしい」というのが、今回お話を伺った千絵子さん・治代さんの正直な気持ちのよう。また、お年玉のキャッシュレス化については「お金だけをせびられているようで、気分が悪い」という気持ちも隠せないといいます。
便利になる一方で、高齢者と子世帯との間に確執を生んでしまっているお年玉のキャッシュレス化。その根底には「もらって当たり前」と思っている子世帯の「勘違い」もあるように思えます。キャッシュレス化、そして今回のコロナ禍は、日頃からの家族の関係やあり方を見直す機会なのかもしれません。「顔を合わせない状況下では、お年玉は渡さない」――これも、1つの選択肢として入れて良いのではないでしょうか。
(和栗 恵)