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どうせなら意義ある寝正月 年始に観たい“新しい年への活力を与えてくれる”映画5選

著者:関口 裕子

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柴又駅前に建つ「寅さん」の像【写真:写真AC】
柴又駅前に建つ「寅さん」の像【写真:写真AC】

 激動の2020年、皆さまお疲れ様でした! そしていよいよ2021年。年始の時期は貴重なエネルギーチャージの時間にしてみてはいかがですか? 大いに笑う映画、一年を考える映画、そして人生を考える映画など、新しい年の糧になる5本を映画ジャーナリストの関口裕子さんのチョイスでご紹介しましょう。どれも傑作ですよ!

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故郷と愛する家族の存在をひし ひしと感じる2本

<お正月映画といえばこれ!『男はつらいよ 望郷篇』>

 お正月映画といえば、これ抜きでは語れない山田洋次監督の『男はつらいよ』シリーズ。年に2本公開されていたこともあるこのシリーズは、かつて映画館の扉が閉まらないほど人を集め、夏冬ホリデーシーズン映画の代名詞だった。それゆえ、映画の中でもお正月は背景としてよく登場している。第5作『男はつらいよ 望郷篇』(1970)もそんな一本だ。

 冬に向かう季節、山口県から長崎県の五島列島は福江島に向かう車寅次郎(渥美清)は、実家に帰ろうとしている乳児連れの女性・絹代(宮本信子)に出会う。わけありな絹代にさくら(倍賞千恵子)の面影を見た寅次郎は、宿泊代のない彼女を自分の宿に泊め、旅館を営む彼女の実家まで送る。

 42歳の渥美清が演じる、キレのいい笑いはかけ値なしにおかしい(寅さんは40歳前の設定)。絹代の父親・千造(森繁久彌)に娘との仲を勘繰られてたじろぐ様子、とらやに居候中の遠縁の夕子(若尾文子)にやんわりと振られるも気付かず、江戸川土手のカップルに迷惑をかける様など、笑い通しの『男はつらいよ』はシリーズ後半では味わえない。

 また、振られてとらやを飛び出す寅さんをさくらが「お兄ちゃん」と涙で引き留める……がシリーズのお約束だが、本作は少し異なる。柴又駅まで送っていったさくらが「お正月までいればいいじゃない」と引き留めると、「世間の人がこたつに当たってテレビ観ているような時に、風に吹かれて、鼻水垂らして、声をからして物を売らなきゃいけない稼業。そこが渡世人のつれぇところよ」と寅さん。さくらの「つらいことがあったらいつでも帰っておいでね」に、「故郷ってやつは、故郷ってやつはね……」と思いの丈を返そうとするも、途中で電車の扉が閉まって聞こえないまま旅立っていく。

 明けて新年、わけありだった絹代が夫と、とらやへお礼に訪れる。寅さんは不在だが、とらやの面々は温かく、父・千造へ無事を知らせる電話をするよう絹代を促す。電話を受ける千造こと森繁久彌の芝居が抜群にいい。ふと思うのは、『男はつらいよ』とは、件の「故郷ってやつ」について描いた作品なのではないか。そんな風に感じられてならない。コロナ禍で帰省もままならぬこの新年、それぞれなりの「故郷ってやつ」を考えてみてはいかがだろう。

 
<冬の旅行気分を味わえる『アナと雪の女王』>

『アナと雪の女王』(2013)は、アレンデール王国の王女姉妹、エルサとアナの物語。戴冠式を前に、秘めたパワーを持て余したエルサは、制止するアナを残して北の山へ行き、魔法で創り出した氷の城に閉じこもる。この時エルサの心情を歌った「Let It Go」は大ヒット。大地を足で踏みしめ、城を創出するパワフルな映像とともに話題となった。

 ベースはアンデルセンの童話『雪の女王』。連れ去られた少年を捜す少女と、ヴィラン(悪者)である雪の女王の話を、ディズニーが姉妹の物語へと脚色。アンデルセンはデンマークの出身だが、『アナと雪の女王』はノルウェーの文化や背景を参考にして再構築された。ちなみに氷の城は、カナダはケベックのアイス・ホテルが参考にされた。

 エルサの得体の知れない部分はヴィラン出身ゆえ。姉妹へと設定が変更されたことで単なる善悪の戦いに終わらない、『アナと雪の女王2』(2019)へとつながる深いドラマが生み出された。

 そんなメインストーリーでは詳細に描かれない文化背景を抽出したスピンオフ『アナと雪の女王 家族の思い出』(2017)が楽しい。主にクリスマス関連ではあるが、雪だるまのオラフが家族の思い出を持たない姉妹のために(ノルウェーの)冬の過ごし方、食べ物、風習などを王国の人々に聞き込み、手に入れていく物語。氷と雪の国の文化を描いているのに、非常に温かい気持ちになる作品だ。