カルチャー
俄然気になる役者・山田杏奈 監督が「要注意人物」と語った理由とは?
公開日: / 更新日:
引いた演技で主演2人と互角に存在する姿
だが、本作での山田杏奈は驚くほどスムーズにその役割を果たした。佐藤監督も山田を「理解も早いし、表現力も素晴らしく、これからどんな女優に成長するか、要注意人物」だと語る。
夏休みにブリーチしたであろう髪はケアされることなく毛先だけ明るいダメージヘアとなっている。持ち物は清潔ではあるが使い込まれた風情、流行を取り入れたとは言えない私服。それらは衣装合わせの際、脚本を読み込んできた山田からも提案がなされたようだ。
ヒロインとしては“魅力的”と言い切れないファッションではあるが、山田はその口調と瞳だけで、ヨッチという人物が、決して声高にアピールすることのない人柄の魅力を最大限に伝えることを成功させた。
キダ、マコト、そしてヨッチが夕暮れの海岸に立ち寄るシーンがある。兵庫県南あわじ市の海の展望広場で撮影された、何でもなくも美しいシーン。ここで約束を交わす3人を“目撃”したからこそ、私たちはこの作品がどのような“エンドロール”を迎えても受け入れられる重要なシーンだ。
ここでも岩田、新田ともに改めてナチュラルな演技が素晴らしかったが、この1月で20歳になったばかりの山田が引いた演技を見せ、なおかつ彼らと互角に存在する姿が目を引く。
何もかもがもやっとしたこの時代に溜飲を下げることのできる、“映画ならでは”の面白さを持った本作。非常に魅力的な岩田剛典と新田真剣佑とともに、山田杏奈の名前をぜひ憶えておいてほしい。
『名も無き世界のエンドロール』2021年1月29日(金)全国公開 (c)行成薫/集英社(c)映画「名も無き世界のエンドロール」製作委員会
(関口 裕子)
関口 裕子(せきぐち・ゆうこ)
映画ジャーナリスト。「キネマ旬報」取締役編集長、米エンターテインメントビジネス紙「VARIETY」の日本版「バラエティ・ジャパン」編集長などを歴任。現在はフリーランス。