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先天性欠損症の子と歩む美馬アンナさんと先輩ママ 「普通って何?」を考える

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・佐藤 直子

9家族から始まった「Hand&Foot」が2年後には200家族に

司会:NPO法人を立ち上げるのは、決して簡単なことではありません。勇気のいる一歩だったのでは。

浅原:2012年5月に娘を出産した当時は、本当に気持ちが落ち込んで毎日泣いていましたし、お風呂で誰にも気付かれないようにシャワーを全開にして泣いたこともありました。ただ私の場合、それを言える相手がいなかったんですね。どうしても落ち込んでいるように見られたくなくて、変に強がっちゃった。「不幸せに思われたくない」っていうプライドなのか何なのか(笑)。

アンナ:すごく分かります、その気持ち!(笑)

浅原:ありますよね?(笑) 本当はむちゃくちゃ落ち込んでいるのに、周りに対しては大丈夫な感じにしていたんです。だけど、やっぱりそれだと苦しくて、匿名でブログを書き始めました。その頃は本当に障害に関する情報がなかったので、たぶん検索して私のブログにたどり着いたのか、だんだんコメントをしてくれる人が増えてきたんです。

 娘が1歳で手術を受けた時、足首から指に皮膚を移植したら結構大きな傷痕が残ってしまいました。女の子でサンダルも履きたいだろうし、そのうちきれいに治るのかすごく気になったので、ブログに書いたんですね。すると、コメントして下さった方々もみんな、お子さんが1歳くらいに手術をしていて、みんなで情報を交換したいなと。

 そこで安心して情報交換するため、パスワード制のコミュニティを立ち上げたのが「Hand&Foot」なんです。最初は9家族という本当に小さなコミュニティだったのが、気が付いたら2年後には200家族になっていました(笑)。

アンナ:みんな求めてたんですよ、そういう場所を!

浅原:私もそうだと思います。200家族になった頃にはオフ会のような形で実際に会って、私もいろいろな方のお話を聞くようになりました。当事者の方やご家族の方、いろいろな方からお話を聞くと、やっぱり小学校でいじめられたとか、気持ち悪いって言われたとか、そういう現状がまだある。

 これをどうにか変えられないかとみんなで話すうちに、「絵本を出版しよう」ということになったんです。パスワード制コミュニティの中で愚痴の言い合いをしていても何も変わらない。しっかり外に発信していこうと絵本を出版するプロジェクトが始まって、その過程でNPO法人にしたのが2016年ですね。

 なので、「こういうことをしたい!」と立ち上げたわけではなくて、自分が欲しい場所を作ったのが始まりだったという感じです。「自分や娘が欲しいものはみんなが欲しいものだ」と気付きました。娘が「同じ手の子と会いたい」と言うので「じゃ、交流会やろう」と声をかけると、みんなもやっぱりやりたいと思っていたり。お泊まり会もしましたし、去年はオーダーメイドの手袋も作りました。

アンナ:手袋は本当にナイスアイデアで、もう拍手しましたね! 私も悩みの1つだったんです。「手袋、どうしたらいいの?」って。

浅原:売ってないですもんね。あの手袋は、娘が「手が冷たい」と言ったのがきっかけでした。やっぱりみんな冷たい思いしているんだろうなって。

アンナ:してますよね。長袖をブラブラさせたままだと邪魔だし、うちの息子は右手首のところに布があると「まくって。嫌だ」って合図するんです。でも、まくると冷えちゃうし、どうしようと思っていたんですけど、あの手袋だったら大丈夫。大きくなっても心配ないですね。

浅原:はい、ご注文お待ちしています(笑)。