仕事・人生
認知症の父の財産管理に四苦八苦 アラフィフ娘が直面した問題とは
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委任状申請や成年後見制度申し立ての難しさを実感
それぞれの契約によって違いますが、解約などの手続きをする際、契約者からの委任状と印鑑が必要なことが多いようです。しかし、認知症で被害妄想が強くなっていた父を相手に、こうした手続きも一筋縄ではいきませんでした。
「お父さん、携帯解約するからね。ここに名前を書いて」
「何で俺の携帯を、お前が勝手に解約するんだ!」
「お父さん、3台も携帯持っているでしょ? 1台に減らすだけだよ」
「そんなことお前に指図されることじゃない!」
とまぁ、委任状にサインをさせるのも一苦労です。それに加えて、通帳や保険証書といった大切なものを持ち出しては紛失してしまうことも多くありました。そのため我が家では未だに、父がどの銀行に口座を作っていたのか、どんな保険に入っていたのか、そうしたことがすべて把握し切れていないのです。
そこで、認知症などで財産管理能力を喪失した者に代わり財産を管理できる「成年後見制度」という制度があります。我が家も必要と判断し、制度について調べてみたところ、この「成年後見人」になるためには、最寄りの家庭裁判所に申し立てを行う必要があります。
まず、成年後見人を申し立てる際、審判のためには本人の同意が必要になります。先ほどのやりとりを思い出してください。同意を取り、書類にサインをさせるまでのやりとりが予想していただけるかと思います。
また金銭的な負担も。申し立ての際に必要な申立手数料や印紙代、戸籍謄本取得代、登記事項証明書代などの費用だけを見ると少額ですが、それ以外にも医師の診断書や、裁判所が障害の程度を判断するための鑑定を行う必要があり、その費用を含めると、数万円~十数万円もの費用が必要になるといいます。
さらに交通費や時間の都合もつけなければいけません。申し立てを行い、審理に進み、ようやく成年後見人であることが認められるまでに最低でも3~4か月はかかり、何かと家裁に足を運ぶ必要も出てきます。
諦めの境地に入った我が家 今後の課題は山積み
助かったのは、父の年金が振り込まれる口座だけ昔から母が通帳などを管理していたため無事だったこと。これが我が家にとってのライフラインとなっています。もちろん今後は、兄か私が成年後見人となり、あれこれと不安材料をつぶしていくことになるでしょう。
保険の件は現在、加入していた保険会社に問い合わせ中。解約するか、継続するかは、どんな保険に入っていたかなどを確認してから、ということになりました(何しろ、保険証書などもすべて失くしているのです!)。
「失敗したね」
先日、母と電話をしながら、猛省しました。ここまで認知症がひどくなる前に、父が加入していた保険や契約について、詳しく教えてもらうべきだったよね。もう少し早く、後々のことを考えておけば良かったね、と。父のことはいわゆる後の祭りではありですが――二度と同じ轍を踏まないよう、母は今、エンディングノートにあれこれと詳しく書き綴ってくれています。
私たち家族のように、大変な思いをする前に――もしもあなたのそばにご高齢の家族がいたら、今すぐにでも「エンディングノート」をお願いしてください。そして、印鑑や通帳の管理について決めておくことをおすすめします。
あらかじめ、備えておくこと。これが、認知症患者本人を守るためにも絶対に必要なことなのです。
(和栗 恵)