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「ノリでの地方移住はやめた方がいい」 農業の世界に飛び込んだ女性が語るその実態

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・山内 亮治

自分の弱さを見せれば相手も心を開いてくれる

地方で縄張り意識が強い人たちと打ち解けるには「腹を割って話すこと」をポイントに挙げる【写真提供:渡辺葉月】
地方で縄張り意識が強い人たちと打ち解けるには「腹を割って話すこと」をポイントに挙げる【写真提供:渡辺葉月】

 渡辺さんのように一念発起して地方に移り住み農業を始めたとしても、一方では厳しい現実が待ち受けています。それは、新規就農者の3割以上が4年以内に離農(農業をやめること)してしまうこと。この理由の1つに、地方という独特な世界も大きく関係しているそうです。

「石垣島の時もそうでしたが、地方へ行けば行くほど人々の縄張り意識が本当に強いんです。だから、よそから来た人を受け入れてくれるということ関して、難しい部分は確かにあるかと思います」

 では、この壁を乗り越えるために何が必要なのでしょうか。渡辺さんはそのヒントとして「腹を割って話すこと」を挙げ、そう感じたエピソードを紹介してくれました。

「『無』の会で働き始めて数か月が経った頃、将来的な独立など自分のこれからについて悩むことがありました。そこで、それまで挨拶程度しかしてこなかった地元のベテラン農家さんに悩みを正直に打ち明けたところ、聞いたことがない口調でどんどんと話してくれて。自分の弱さを見せると相手も心を開いてくれるんだと思いましたね」

 そうして、地元の人たちとも打ち解けた渡辺さん。今では悩み事の相談だけでなく、一緒にゴルフにも行く間柄になったのだとか。

 そして、会津美里町に移り住んで半年以上が経った今、自身の内側にも変化を感じています。

「都会の生活では不必要な情報を受け続けたり人と自分を比べたりする中で、気付かないうちにいろいろな殻を身にまとってしまっていたと思うんです。でも、会津に来てからはその殻をどんどんと脱ぎ捨てることができ、自分本来の姿に戻ってきているという感覚があります」

理想の移住先を見つけるために大切なこととは

 自分本来の姿を取り戻すといった、地方移住したからこそ得られたメリット。コロナ禍で日常のさまざまな生活様式が変わっていく昨今、そうした変化を求め地方移住を検討し始めているという人も多いでしょう。

 しかし、渡辺さんは自身の経験を踏まえ「ノリで移住することもあるかと思いますが、それは絶対に失敗すると思うのでやめた方が良いですね」と語ります。

「地方移住のポイントを挙げるとしたら、気になる土地があれば実際に行ってみることでしょうか。その土地の空気を吸って、いろいろと見て感じるべきです。その上で住みたいと思えたなら、それは必ず良い方向に行くと思います」

 実際、「無」の会へ転職を決めるまで、福島以外にも山形や秋田など東北地方を中心に5件ほどの農家を回ったそうです。そして、このように現地へ実際に足を運ぶことは、理想の移住先を見つけるための大切なポイントだといいます。

 渡辺さんは今後も会津美里町で農業を続けていく予定ですが、イチゴ栽培での成功以外にも思い描いているライフプランがあるそうです。

「今一番実現したいのが自給自足の生活なんです。ハーブだけでなく納豆やみそ、しょうゆなど、そうしたものすべてを手作りしながら暮らすナチュラルな生活をしてみたいなと。そしていつか、自給自足のお手本を示せるような人になりたいですね」

 会津美里町への移住を機に再び始まった、地方での新たな生活。そこから新たなロールモデルを発信しようとする渡辺さんの挑戦はこれからも続きます。

◇渡辺葉月(わたなべ・はづき)
1994年生まれ。神奈川県横浜市出身。小学生の頃からスポーツ漬けの日々を送り、中学時代はバスケットボール部で神奈川3位、高校では女子野球部で全国大会3連覇を達成。大学時代はランニングの指導法やスポーツ心理学を学ぶ傍ら、YMCA主催のボランティア活動などに参加。大学卒業後は東急電鉄グループが運営する学童保育に就職するも1年で退職し、沖縄県石垣島へ移住。その後、東京で2年間の保育アルバイトや飲食店勤務を経て、2020年10月に有限会社自然農法「無」の会に転職。現在はイチゴの無農薬・無化学肥料栽培に挑戦している。
渡辺葉月さんウェブサイト(「農業一年目の若手ド素人」が高品質な完全無農薬イチゴを届けます!):https://sites.google.com/view/hazukiiiiichigo

(Hint-Pot編集部・山内 亮治)