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全米視聴率は激減でも必見ポイント多数 米アカデミー賞授賞式で見えたハリウッド事情
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現地時間4月25日に開催された第93回米アカデミー賞授賞式。先日発表された全米視聴者数は985万人と、前年の2300万人超から激減してしまいました。とはいえ、スティーブン・ソダーバーグ監督ら3人がプロデュースを担当した式は、まさにハリウッドの現在を示す内容だったようです。受賞者のドレスに注目した前回に続き、今回はプレゼンターたちを軸に式全体を振り返ってみました。解説は映画ジャーナリストの関口裕子さんです。
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式をプロデュースしたソダーバーグ監督による映画的な始まり
第93回アカデミー賞は新型コロナウイルス感染予防の点から、米ロサンゼルスのダウンタウンにあるユニオン駅とハリウッドのドルビーシアターに分けて開催されました。
メイン会場となったユニオン駅は、さまざまな映画やドラマの舞台になっている場所。『ダークナイト・ライジング』(2012)や『ブレードランナー』(1982)などにも登場します。
そんなユニオン駅での祭典に出席できるのは最大170人。上限を超えないために、登壇する関係者などは入れ替わりとなりました。それを逆手に取って授賞式の構成に取り入れたのは式のプロデューサーを務めた1人、スティーヴン・ソダーバーグ監督。
授賞式はまず、オスカー像(アカデミー賞のトロフィー)を片手に駅のコンコースを歩いていくレジーナ・キングをワンカットで捉えた映像からスタート。とても印象深い映画的な始まりとなりました。レジーナのドレスは「ルイ・ヴィトン」。ダッチスサテンにシルバーのスパンコールがあしらわれています。
バリー・ジェンキンス監督『ビール・ストリートの恋人たち』(2018)で、一昨年の助演女優賞に初ノミネート&初受賞したレジーナ。今回の授賞式ではオープニングの挨拶を務めました。
そこではBLM(Black Lives Matter)が注目されるきっかけとなった黒人男性死亡事件で被告の元警官が有罪になったことにも触れ、「有罪になっていなければ、私は今ここではなく抗議の場に立っていたかも」と発言。スピーチの時間をカウントダウンせず、発言内容も規制しないとする演出上の変化がもたらした、心に残るスピーチの1つとなりました。
過去の受賞者たち務めるプレゼンター 今年も豪華な顔ぶれ
プレゼンターで印象的だったのは、マーメイドスカートのドレスとガウンで登場したリタ・モレノ。1961年『ウエスト・サイド物語』で助演女優賞を受賞し、今年公開予定のリメイク版ではエグゼクティブプロデューサーを務めています。とても89歳とは思えない若々しさで場をさらいました。
『愛は静けさの中に』(1986)で主演女優賞を受賞したマーリー・マトリンもプレゼンターで登場。聴力のハンディキャップを実際に持つマーリーは、同作でろうあの少女を演じていました。今回の授賞式では、短編ドキュメンタリー賞を手話で発表しています。
袖にスワロフスキーのクリスタルがあしらわれたドレスは、動物性成分を使用しないヴィーガン・テキスタイルで作られたもの。映画監督・脚本家ジェームズ・キャメロンの妻で女優のスージー・エイミスが提唱する、“持続可能なレッドカーペットグリーンドレス”に共感したものだそうです。
実のところマーリーは、短編実写映画賞にノミネートされた『フィーリング・スルー(原題)』のエグゼクティブプロデューサーでもあります。同作は、助けを必要とする盲ろう者の男性と帰る家のない男性が偶然に出会い、展開する物語。マーリーは盲ろう者がキャスティングされることが重要なのだと語っています。