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全米視聴率は激減でも必見ポイント多数 米アカデミー賞授賞式で見えたハリウッド事情
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レッドカーペットが「久々の外出」だった有名女優
また、プレゼンターがノミネート作品のエグゼクティブプロデューサーである例は他にもありました。「ポメラート」のジュエリーを身に着け、助演男優賞のプレゼンターを務めたローラ・ダーンです。
ローラがエグゼクティブプロデューサーを務めた作品は、短編アニメーション映画賞にノミネートされた『愛してるって言っておくね』。乱射事件で子どもを亡くした両親を描いた物語で、彼女は「私たちはこの国の悲劇を自分の人生にかかわりのないこととして受け入れることはできません」と語っています。
『マリッジ・ストーリー』(2019)で昨年の助演女優賞を受賞したローラは、『わたしに会うまでの1600キロ』(2014)でリース・ウィザースプーンと共演。同作ではリースが主演女優賞、ローラが助演女優賞候補となりました。現在も仲良しの2人は授賞式の朝、そろってPCR検査を受けたことをインスタグラムで報告し、話題となりました。
リース・ウィザースプーンは、「ディオール」のドレスに「ブルガリ」のジュエリーで長編アニメーション映画部門のプレゼンターとして登場。新型コロナウイルスの感染予防のため、約1年間家から出ずに過ごしたそうで、レッドカーペットでは「家を出ることにとても興奮している」と語っていました。
番狂わせで終了した授賞式 誰も事前に結果を知らないことの逆証明に
『マ・レイニーのブラックボトム』で主演女優賞にノミネートされたヴィオラ・デイヴィスは、「アレクサンダー・マックイーン」の白いドレスに「ジミーチュウ」のクラッチバックで。上半身は肌が一部露出しているように見えますが、実は模様だそうです。
『フェンス』(2016)で助演女優賞を受賞し、ノミネートも今回で4回目となるヴィオラ。自分の受賞より、主演男優賞にノミネートされた故チャドウィック・ボーズマンの受賞を見届けに来たようでもありました。『ブラックパンサー』(2018)で高い評価を受けながらノミネートもされなかったボーズマンは、今年の大本命でした。
授賞式をプロデュースしたソダーバーグ監督は、そのために発表順序をこれまでと変えて主演男優賞の発表を最後にしたと思われています。しかし、受賞者として読み上げられた名前は『ファーザー』のアンソニー・ホプキンス! オスカー史上最年長の受賞者となった83歳のホプキンスは英国ウェールズにおり、発表が英国時間午前4時だったため就寝中だったそうです。
感動的に終わるはずだった授賞式は、「アンソニー・ホプキンスの代わりにアカデミー協会が受け取ります」の言葉でフェードアウトするように終了。アカデミー賞に番狂わせはつきものですが、式を放送する米民放ABCも式の演出者も、受賞結果を本当に知らないのだと改めて世界に印象付けました。
さまざまなハリウッド事情が見えてくる授賞式は、それ自体がとても面白いエンターテインメント。今年はさらにその印象が強い内容だったといえるでしょう。
(関口 裕子)
関口 裕子(せきぐち・ゆうこ)
映画ジャーナリスト。「キネマ旬報」取締役編集長、米エンターテインメントビジネス紙「VARIETY」の日本版「バラエティ・ジャパン」編集長などを歴任。現在はフリーランス。