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年を重ねるとさらに泣ける映画3選 名作から最新作までポイントは「失う」こと
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『ファーザー』~記憶を失った時
記憶をなくす映画には、ライアン・ゴズリングとレイチェル・マクアダムス、ジーナ・ローランズが出演したニック・カサヴェテス監督の『きみに読む物語』(2004)、ソン・イェジン、チョン・ウソン主演の『私の頭の中の消しゴム』(2004)など傑作が多い。肉体はそこにあるのに、記憶が消えていくことのやるせなさに号泣させられる。
『ファーザー』(2020)は第93回アカデミー賞で主演男優賞と脚色賞を受賞。記憶をなくしていく様子が主観で描かれる作品だ。アンソニー・ホプキンス演じるアンソニーは認知症が進行し、娘アン(オリヴィア・コールマン)の言っていることや状況が理解できなくなっている。自分がいる場所すら把握できず、介護人に横柄な態度を取って辞められてしまうアンソニーに、アンは身も心も疲弊していく。
介護の話としても身につまされるが、実は認知症の症状は過度のストレスがかかった時に出るうつ病の症状にも似た部分がある。作品をアンソニー側から描くことで、うつ病および認知症の疑似体験ともなる本作。思い当たる部分が見つかったら、休暇が必要だということかもしれない。
ストレスの多いコロナ禍。だからこそ自分の心と向き合うことは必要であり、大泣きしてしまうのもこの際、プラスなのではないかと思う。
(関口 裕子)