インタビュー

育休がない…子育てと仕事の両立は俳優の世界でも一苦労 安藤玉恵が語る実体験

著者:yoshimi

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結婚と出産を経験する一方、俳優としてのキャリアを重ねた安藤さん。仕事と家庭のバランスを取るための苦労も【写真:荒川祐史】
結婚と出産を経験する一方、俳優としてのキャリアを重ねた安藤さん。仕事と家庭のバランスを取るための苦労も【写真:荒川祐史】

 テレビや映画とは異なり、俳優が目の前で実際に演じる舞台演劇に独特のイメージを抱いている人も多いのでは? とはいえ、携わる人たちにとって舞台もまた“仕事場”です。舞台やドラマ、映画と幅広く活躍する俳優・安藤玉恵さんも、俳優のお仕事と男の子の母親というプライベートを両立させてきた1人。そこで今回は、6月6日からKAAT神奈川芸術劇場で上演される舞台『虹む街』への出演を控えた安藤さんにじっくりと話を伺いました。前編は仕事と家庭、そのバランスの取り方についてです。

 ◇ ◇ ◇

 安藤玉恵さんは大学時代から演劇の世界に入り、2003年に『ヴァイブレータ』で映画デビューを果たしました。現在までに多数の映画やドラマに出演する一方、舞台への出演ももちろん継続。観る側をはっとさせる表情や独特の存在感で、非常に強い印象を残す俳優です。

 安藤さんは俳優として順調にキャリアを重ねる中、プライベートでは劇作家・演出家のタニノクロウさんと結婚し、2007年に男の子を出産。これまでの過程には、キャリアや時間の使い方、子どもを預ける場所など、世の働く母親たちと共通した悩みが存在していたといいます。ライフイベントによるキャリアの喪失は、俳優の世界でもやはり大問題なのだそうです。

 そこを何とか乗り切り、お子さんは中学生に。現在の安藤さんは、仕事と子育ての両立について同じ女性の俳優たちから質問されることも多いそう。そこで安藤さんは「この業界も少しずつ変えていかなくちゃいけない」と考えることもあると語ります。

尊敬する大先輩の言葉で家庭を持つ覚悟ができた

――働く女性の中には、出産・子育てでのキャリア喪失に悩む方も少なくありません。安藤さんも、俳優として順調に重ねてきたキャリアが出産で中断されることに不安はありませんでしたか。

 皆さんが悩むのと同じで私も迷った時期がありました。でも、すごく好きな俳優の先輩から「子どもを産んで休まなくちゃいけない時期を経て、仕事が来なくなるようだったら、それまでの才能だと思って諦めなさい」と言われたんですよ。

 厳しい言葉でしたけど、出産後も役者を続けたいという気持ちに覚悟ができたので、言ってもらえて良かったなと思います。その言葉がなかったら、家庭を持つきっかけがつかめなかったかもしれません。

――出産後に俳優に復帰した時、一番大変だったことは何でしょうか。

 俳優業は時間が不規則なので、そこが一番大変でしたね。仕事が9時~17時と決まっているわけではないので、子どもを預けられる場所がないんです。タニノさんも地方や海外公演が多く、お互いが不規則な状態だったので、ベビーシッターさんにお願いしていました。0歳の時から来ていただいているので、もう14年くらいのお付き合いになります。

――ずっと同じ方にお願いしていらっしゃるんですね。

 早朝からのロケだと前日から泊まってもらったり、逆に舞台が終わってから夜11時頃まで見てもらったり。やっぱり同じ人の方が安心ですから。ベビーシッターさんを探すのも本当に大変だったので、「子どもにとって居心地よく、いつでも安心して預けられる場所があればいいな」とずっと思っていますね。

育児はお母さんだけでなく夫婦2人でやるものという感覚で

――勤務時間が不規則な業種だと預ける場所が見つからず、仕事を辞める選択をする方も多くいらっしゃいますね。

 そうなんですよ。「どうやって仕事とバランスを取っているの?」って、何人もの俳優さんに聞かれました。同じ職種なので、参考にしてもらえたらいいと思って話すんですけど、「もう舞台はできない」と諦めちゃう人も多い。この業界も少しずつ変えていかなくちゃいけないなと思いますね。

――女性が子育てと仕事と両立するには、まだまだ行政が整っていない部分もあるのかなと思います。

 少し前に「保育園落ちた日本死ね」というブログが話題になりましたけど、あの発言には同意する部分もありました。私も保育園には落ちましたから。ただ、会社勤めの方とはまたちょっと違って、俳優には休業補償も育休もない。そこも含めて、もっと子どもを産んだ女性が生きやすい世界になればいいなと今も思っています。

 でも、昔は大変でも声を上げるところがなかったので、苦しいことをSNSなどで言えるようになったのは、お母さん方にとっては進歩なのかなと。育児はお母さんだけでなく、夫婦2人でやるものという感覚の方が増えてきているのも素敵ですよね。夫が手伝うものではなく、2人ともが当事者という思いを持っている方が多くなると、もっと働きやすくなるような気がします。