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親子の交流に台本の読み合わせはおすすめ!? 俳優・安藤玉恵が語る“演劇のある家庭”
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『虹む街』は多様性を題材にした人間ドラマ
――『虹む街』は、安藤さんのパートナーでもあるタニノクロウさんが作・演出を手掛けています。安藤さんはタニノさんの作品にどのような魅力を感じていらっしゃいますか。
「今回は何をやるんだろう」と想像がつかないところですね。どんな物語なのか、ではなくどういう見せ方をするんだろうと。毎回違うタイプの現代美術館に行くような感じです。そういう楽しみ方ができる劇作家、演出家じゃないかなと思います。
――今回の『虹む街』は横浜・野毛の飲食店街を舞台に、その街でたくましく生きる多国籍な人々の姿を描いた人間ドラマです。それを美術館に例えるなら?
「横浜でやること」という場所にこだわっている部分が面白いなと思います。KAATで、横浜の野毛が舞台という、こだわり。さまざまなルーツを持つ人たちがたくさん出演しますし、タイトル通りですよね。虹、レインボーという多様性、ダイバーシティ。そういう意味では、最先端の美術館ですね。
――その中で安藤さんが演じるのは、街唯一のコインランドリーのオーナー。どんなキャラクターでしょうか。
人にも物にも愛情深い人物なのかなと思っています。洗濯機や乾燥機、コインランドリーにあるものと同等に人間も愛しているという感じ。愛が深いキャラクターですね。「自分の住んでいる街が好き」という気持ちを持って演じたいと思っています。
子どもには上手に伝えられる方が伝えればいい
――タニノクロウさんとの間には中学生の息子さんがいらっしゃいますが、芝居の話を持ち込まないなど、家庭内にルールはありますか。
それがないんですよ(笑)。私自身、お母さんとして子どもに積極的に関わろうという気持ちは変わらないですが、今の息子は絶賛反抗期なので(笑)。彼に任せている部分が多いですね。お父さんと息子、男同士だから気持ちが分かるみたい。自分の中学生時代を思い出して「そうそう!」って共感したりも。
人に対して何をどう伝えるかはタニノさんの方が上手ですから、伝えられる方が伝えればいいのかなと思います。私ははっきり言うタイプなので、息子はグサグサ傷付くみたい。「ウザイ」「何回も言わなくても分かってる」って言われちゃう(笑)。
――バトンタッチではないですが、お子さんから少し手が離れた部分もありますね。
そうですね。家でも仕事ができるようになったのも、楽になった部分ですね。セリフを覚える時、子どもに相手役をやってもらったりするんですよ。覚えにくいセリフがあった時、背に腹は代えられないだけなんですけど(笑)。そういう時は子どもの成長が見えますね。ちゃんと状況が分かってセリフを言ってるなとか、そんな漢字が読めるようになったんだ! とか。
コロナ禍では子どもの友人たちと一緒にオンラインで読み合わせも
――俳優さんならではのコミュニケーション法ですね。
台本読み合わせは意外とおすすめかもしれないです。去年、コロナで休校だった時期に子どもたちと一緒にオンラインで台本を読み合う「私立玉恵学園」という試みをやっていたんです。仲の良いクラスのお友達やお母さん方と宮沢賢治を読んだりして、面白かったですね。コミュニケーションの1つとしてはおすすめです。マニアックですけど(笑)。
――それを機に、舞台に興味を持ってもらえたら素敵ですね。
そうですね。うちは観せすぎてしまって「もう演劇はいいよ」となっていますけど(笑)。そんなに難しく考えずに劇場に来てくれたらいいなと思います。
『虹む街』は、何か事件が起こるわけでもなく、淡々と人々が生きている街の風景を描いている作品なので、観た方は「何を見せられているんだろう」と思われるかもしれません(笑)。ふらっと覗きに来るような気持ちで気楽に観に来ていただきたいですね。
1976年8月8日、東京都出身。早稲田大学在学中に演劇を始め、数々の舞台に出演。主な出演に映画『夢売るふたり』(2012年・西川美和監督)、『恋人たち』(2015・橋口亮輔監督)、『探偵はBARにいる』シリーズ、ドラマ「深夜食堂」シリーズ、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」など。実家の老舗とんかつ店「どん平」にて『安藤玉恵による“とんかつ”と“語り”の夕べ』を不定期開催中。現在NHK土曜ドラマ「今ここにある危機とぼくの好感度について」に出演中。
作・演出:タニノクロウ
出演:安藤玉恵・金子清文・緒方晋・島田桃依・タニノクロウ・蘭妖子 ほか
日程:2021年6月6日(日)~20日(日)
会場:KAAT神奈川芸術劇場<中スタジオ>
公式サイト:https://www.kaat.jp/d/nijimumachi
(yoshimi)