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2児の母・菅野美穂が演じるワンオペ育児のリアル 疲弊する母たちを描く『明日の食卓』

著者:関口 裕子

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(C)2021「明日の食卓」製作委員会
(C)2021「明日の食卓」製作委員会

 1977年生まれの菅野美穂さんは、今年で44歳。映画やCM、テレビドラマ、バラエティ番組などへの出演も多く、妊娠出産によるブランクを大きく感じさせない活動を継続しています。しかし、プライベートでは2児の母として子育てに奮闘。仕事との両立など、あらゆる悩みも経験しているようです。新作の主演映画『明日の食卓』では、そんな菅野さんが「運命を感じた」という役を熱演しています。育児に追い詰められた結果、我が子に手をかけてしまった母、そして似た境遇にある3人の母たち……壮絶な物語と菅野さんの姿から伝わるものとは? 映画ライターの関口裕子さんに解説していただきました。

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単純に“子育てを経験したから”持ち得たものではない演技

「子どもをお風呂に入れる時自分のことをかまっている時間はないので、全身をボディソープで洗う」「誰のことも怒っておらず、イライラもしてなく、誰もぐずっていない時間は、1日のうちに5分もない」……朝の情報番組でリアルな子育て話をしている菅野美穂に目が留まった。

『パーマネント野ばら』(2010)、『ジーン・ワルツ』(2011)、『大奥~永遠~[右衛門佐・綱吉篇]』(2012)などの主演を務めてきた俳優・菅野美穂は、2013年に俳優の堺雅人と結婚。今や5歳長男と2歳長女の母でもある。今年は主演ドラマ「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!」(日本テレビ系)で浜辺美波の“母”を演じ、姉妹のような2人のキュートなかけ合いが話題になった。

 浜辺の母役にはやや若いような気もするが、母子3組の子育てを並行して描いた瀬々敬久監督の新作『明日の食卓』で演じる小学生の息子2人の母役は予想以上にしっくり。しかしそれは単純に子育てを経験したから持ち得たものではない。

 この脚本が、原作(椰月美智子の同名小説)が、今の菅野美穂が世に送り出したい“何か”とシンクロしたのだろう。「私自身が育児中ということもあり、運命を感じる役との出会い」と菅野は言っている。

ワンオペ育児に疲弊する母たち 3人を襲う試練とは

『明日の食卓』はこんな物語だ。10歳でこの世を去った男の子“イシバシ・ユウ”。彼と同じ名前の息子を持つ3人の母たちは、住む場所も環境も異なるがそれぞれのやり方で、小さなことや進退きわまる大事件に、一喜一憂しながら子どもを育ててきた。

 そんな3人に厳しい試練が訪れる。基本、ワンオペ育児を行う彼女たちが抱えるのは、女性の社会進出への枷やシングルマザーの貧困、高齢家族の介護といった問題。その時、彼女たちはどう向き合い、どう行動するのか?

 菅野美穂が演じるのは、いたずら盛りの息子2人がいるフリーライター、石橋留美子。ブランクを経てライターの仕事に復帰した留美子は、収入源を失った夫に代わって家計を支えることになる。にもかかわらず、夫は家事や子育てに非協力的で、息子たちも留美子の言うことを聞かない。留美子は疲弊し切っていく。