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年齢のとらえ方次第でいつでも変われる…59歳からクロスフィット世界一を目指す女性の挑戦

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・山内 亮治

「目指せ、世界一!」キャンペーンが発足

 トライアスロンで頭角を現し、日本代表にまで上り詰めた米倉さんですが、出産と子育てを機に10年ほどスポーツから離れる時期があったといいます。好きなダンスは続けていたそうですが、本格的なスポーツから離れたこともあってか“ある悩み”が。

「ダンスはしていましたが体重が気になって。食事制限ではなく動いて痩せられればそれがベストだと思っていましたが、筋トレなんてとんでもないなと。筋肉が付きすぎてしまうと、体形が変わってしまいますし、動きが硬そうに見えてしまいますから」

「何とか健康的に痩せられる良い方法はないか」と考えていた4年前、ある日偶然テレビで有名クロスフィットトレーナーのAYAさんを目にしました。番組では日常生活での動きをベースにしたトレーニングが紹介されていたことから「これは良い!」と思ったそう。また、土屋太鳳さんや中村アンさんなど、スポーツにゆかりのある著名人が支持していたことにも説得力を感じたといいます。

 そうして自宅近くにジムができたことを機に、3年前の8月からクロスフィットを開始。ジムで出会った仲間にも触発されて、こちらでも大会に出ることが決まりました。

「一昨年に『スケール』と呼ばれる、いわゆる『一般の部』のような大会に出ました。55歳から59歳までのエイジグループで出場者そのものが少なかったこともあり、世界26位という成績を収めたんです。そうなると、頑張れば何とかなるんじゃないかと思い、自分の中で『目指せ、世界一!』というキャンペーンが立ち上がりました」

 世界一を目指し一気に火がついた米倉さん。「スケール」は指定された重さを少し軽くし、動作も簡単に調整したものですが、今度は「RX」というより難易度の高いステージでの参加を決めました。米倉さんいわく、指定された重さや動作を調整することなく行うこちらは「選手権の部」とのこと。

 とはいえ、目標達成に向けては冷静な考えも。それは「60歳の時に勝負」というもの。55歳から59歳までのエイジグループで55歳になったばかりの人と競うとなれば、自身の年齢が上がるにつれどうしても力の差が否めないためです。そのため、還暦を迎えて臨む2022年が米倉さんにとっての“本番”でしたが、周囲の反応は違ったようです。

「『今年、出なくてどうすんの?』ってツッコまれてしまって。確かに来年につなげようと思えば、大会に出場することは大事でしたね」

年齢は「レベル」 とらえ方次第でいつでも変わっていける

今年の世界大会は悔しい結果も、その目はすでに60歳で迎える“本番”へ【写真:伊藤万利子】
今年の世界大会は悔しい結果も、その目はすでに60歳で迎える“本番”へ【写真:伊藤万利子】

 そうして本格的な大会参戦となった今年3月、まずは世界大会準々決勝への切符を掴むための予選に挑みました。55歳から59歳までのエイジグループでは世界から約3000人が参加し、そのうちの上位10%に入ることが予選通過の条件。米倉さんはこれを見事突破し、アジア1位にも輝きました。

 そして、冒頭で触れた通り世界大会準々決勝へ。結果はどうだったのでしょうか。

「154位だったので、上位20人にまで許される決勝には進めませんでした。結果こそ残念ですが、大会に出場することで実力がつくと思っていたので、出場して良かったと思います」

 世界一という夢は今年、惜しくも準々決勝で潰えましたが、世界の舞台を目指す思いはどこから湧いてくるのでしょうか。これにはやはり、トライアスロンでの経験が大きかったといいます。

「ハワイで行われるトライアスロンの世界大会『アイアンマン世界選手権大会』に2度出場しました。3回目も出場予定でしたが、妊娠で辞退してしまって。そうした世界の舞台に立った経験があるので、また立ちたいんですよね。世界の舞台って良いですよ。そこにいる人たちとしかできない話がありますし、何よりもそうしたステージにいる人ならではのエネルギーがありますから」

 そうは言っても、年齢を重ねることによる衰えは否めないはず。そんな一般的には常識と思えることも、米倉さんは独自の発想で乗り越えようとしています。

「私、年齢のことを『レベル』って呼んでいるんです。なので、1つ年を重ねることは人間のレベルが1つ上がったってことなんですよ。人間は年齢のとらえ方次第でいつでも変わっていけると思います」

 11月にはついに還暦を迎え、クロスフィットの世界大会でより高みを目指すための“勝負の1年”がスタート。また1つレベルアップする米倉さんの挑戦は、これからも続きます。

取材協力:UNINTERRUPTED Fitness

◇米倉恵美(よねくら・えみ)
1961年11月生まれ。福島県福島市出身。小学校2年生でクラシックバレエを始め、中学校で卓球、高校と大学でハンドボールをプレーし、大学時代にバレエを再開。ダンス好きが高じて卒業後はダンスインストラクターとしてスポーツクラブに就職。その後、職場での縁や教室開催をきっかけとしてトライアスロンに参加し、日本代表に選出され国際大会にも出場した。出産・育児を経た50代半ばからクロスフィットを始め、2021年には55歳~59歳の部で世界大会「クロスフィット・ゲームス2021」準々決勝に出場。約300人中154位に。現在は60歳~64歳の部での世界大会決勝進出に向け、新たな挑戦を続けている。

(Hint-Pot編集部・山内 亮治)