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ヘプバーンと明石家さんまが共演!? 日本で人気CMの“元ネタ”になった古典映画3選
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世界で一番引用&オマージュを捧げられている映画とは?
チャールス・F・ライズナー監督、バスター・キートン主演の『キートンの蒸気船』(1928)は世界で一番引用、およびオマージュを捧げられている映画なのではないだろうか。アメリカ映画に限らず、とてもよく『キートンの蒸気船』をリスペクトしたと思われるシーンが出てくる。
キートンは、体を張った笑いで人気を博したコメディアン。チャーリー・チャップリン、フランク・ロイドと並ぶ「喜劇王」といわれている。キートンの面白さは最悪な事態に巻き込まれても顔色ひとつ変えず、その場を乗り切っていくところ。
『キートンの蒸気船』では、ミシシッピー川を航行する蒸気船会社の1人息子を演じる。だがライバル会社の社長の娘と恋に落ち、大反対にあう。その上、大小さまざまな不運に見舞われるが、ミシシッピーを襲ったサイクロンからみんなを命がけで救ったことで許しを得る物語だ。
このサイクロンがものすごい。家を吹き飛ばし、人を飛ばし、町をめちゃくちゃに破壊していく。誰かの家のファサードがキートンめがけて倒れてくる。間一髪彼が助かったのは立っていたのが窓の部分だったから。合成などない時代の話、文字通り命がけのスタントだった(登場人物全員が)。
このシーンにオマージュを捧げたのは、福山雅治を起用した2009年8月公開のキューピー「キューピーハーフ」CM「燕尾服とおにぎり」篇。燕尾服姿でおにぎりを食べる福山の上に壁が倒れてくる。モノクロ、倒れる風圧で福山の髪が揺れるなど映像のインパクトは十分だ。
同様のリスペクトシーンは他にも、ピーター・ウィアー監督・ハリソン・フォード主演『刑事ジョン・ブック 目撃者』(1985)、ジャッキー・チェン監督・主演『プロジェクトA2 史上最大の標的』(1987)、ディズニーアニメーションの傑作『アラジン』(1992)など多くの映画で観ることができる。
コメディアン、バスター・キートンを敬愛する映画人はいまも多いのだ。100年近くたっても、こんなふうに無理なく途切れずに作品とパフォーマーが語り継がれていくことにある種の理想を感じる。
(関口 裕子)
関口 裕子(せきぐち・ゆうこ)
映画ジャーナリスト。「キネマ旬報」取締役編集長、米エンターテインメントビジネス紙「VARIETY」の日本版「バラエティ・ジャパン」編集長などを歴任。現在はフリーランス。