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推しは推せる時に推せ! “刹那の瞬間”を焼き付けた奇跡の映画『ハニーレモンソーダ』

著者:関口 裕子

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その季節を生きる者のみ身にまとうことができる“光”

(c)2021「ハニーレモンソーダ」製作委員会(c)村田真優/集英社
(c)2021「ハニーレモンソーダ」製作委員会(c)村田真優/集英社

 話を『ハニーレモンソーダ』に戻そう。本作は“胸キュン”青春ラブストーリーだが、弱みを見せない少年・界が自分をさらけ出せる相手・羽花を見つけ、人間の内にある深みと広さ、清と濁に気付き成長していく物語でもある。

 羽花と打ち解けるまでの界は、しばしば学校内の教科準備室を隠れ家としていた。男子からも女子からも人気のある界。皆の憧れを背負うからこそ1人になる時間が必要なのだろう。その姿は現実社会で「アイドル」を仕事とする人たちにも重なって見える。

 いや、1人になって態勢を立て直すことができる“準備室”を欲しているのは、界だけじゃない。学校内の人間関係が複雑化している今、この“準備室”には多くの学生が共感するのではないか。だが、界はやがて準備室を必要としなくなる。“その理由”こそが、この映画を観てほしいポイントなのだ。

 現在18歳のラウールが界を演じたのは17歳の時。プロモーションでテレビ番組によく出ていた本来の彼は強気でクールな映画の界とはまったく異なる。だが、そのギャップもまたかわいい。

 私が箱推しするグループは本作の主題歌も歌っている。楽曲は、映画の世界観にリンクして作られており、ダンス、音楽性ともにとても練られている。そして、それを元気に歌い踊る推したち。最年長は末っ子のラウールとだいぶ歳が離れている……と言い張っているが、それだって20代だ。めちゃめちゃ若い。

 その季節を生きる者のみ身にまとうことができる“光”。こうした映画はその瞬間を余さず映し出すことに成功している。その刹那を逃さずにスクリーンに焼き付けることができたのは奇跡だ。瞬間は待ってくれないのだから。

 それはまた、私たちの側にも言える。推しは推せる時に推す。楽しいから推す。大事なことなので2回記しておこう。

 
『ハニーレモンソーダ』全国ロードショー公開中 企画・配給:松竹 (c)2021「ハニーレモンソーダ」製作委員会(c)村田真優/集英社

◇関口裕子(せきぐち・ゆうこ)
映画ジャーナリスト。「キネマ旬報」取締役編集長、米エンターテインメントビジネス紙「VARIETY」の日本版「バラエティ・ジャパン」編集長などを歴任。現在はフリーランス。

(関口 裕子)