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有村架純の“とらえどころのなさ”が光る ついに完結した『るろうに剣心』での“役割”とは

著者:関口 裕子

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(c)和月伸宏/集英社(c)2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会
(c)和月伸宏/集英社(c)2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会

 国民的ヒットシリーズ『るろうに剣心』の公開がスタートしたのは2012年。9年を経てついに到着した完結編は『るろうに剣心 最終章 The Final』(4月公開済)と『The Beginning』(公開中)の2本で構成され、物語の“最後”と“始まり”を描いています。有村架純さんは始まりを描く『The Beginning』で、剣心とそれを演じた佐藤健さんがシリーズスタート当初から心に抱いていた女性、雪代巴役で出演。普段のナイーブなイメージから一転した演技を披露し、さらには実際の有村さんと重なる“とらえどころがない”部分も表現しているようです。映画ジャーナリストの関口裕子さんに解説していただきました。

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共演者と大友監督が“妖しく”て“殺気を秘める”存在と語る巴

「今読んでいる本は?」と問われた有村架純は、森下典子の「日日是好日-「お茶」が教えてくれた15のしあわせ-」と樹木希林の「一切なりゆき 樹木希林のことば」をあげた。それぞれ「お守りになっている」「凝り固まった気持ちをほぐしてくれる」本なのだそう。どちらも足が地に着いた日常を語る本。有村架純、この世界と地続きなのか。

 有村架純は関西出身。『花束みたいな恋をした』(2021)やドラマ「コントが始まる」(日本テレビ系)で共演する菅田将暉は、有村を「ド関西人」だと言う。高校在学中の2009年、現所属事務所のオーディションを受けてデビュー。受けた理由はドラマや映画が大好きだったからで、自分が演じる様を普段から妄想していたという。

「最初から就職という感覚で上京した」というしっかりした考えの持ち主。17歳から仕事を始めたが、“自覚”が芽生えたのは20歳頃だという。新しい作品に臨むにあたってはきっちり予習をする方。でも鎧をつけすぎると芝居が固まってしまう。何をどれだけ身にまとって臨むか模索中なのだそう。

 有村が大友啓史監督『るろうに剣心 最終章 The Beginning』で演じた雪代巴は、そんなナイーブさと無縁。表情はなく、笑みも涙も浮かべない。共演者や大友監督は巴を“妖しく”、“殺気を秘める”存在であると語る。

 それを演じる有村架純について、大友監督は「真っ白い心」、主人公の緋村剣心として共演した佐藤健は「ミステリアス」と表現。有村は首を左右に振って否定するが、この作品で語られる巴や有村自身は本当にとらえどころがない。

大友監督が2度も“笑顔を封じる役”をオファーした理由とは

 有村架純と大友啓史監督との仕事は『3月のライオン 前編/後編』(2017)に続き2度目となる。『3月のライオン』で演じたのは、主人公の家族を事故で失った孤独な天才少年棋士、桐山零(神木隆之介)の義姉、幸田香子。プロ棋士である父のもと棋士を目指していたが、圧倒的な将棋の才能を持つ零に勝てないことを理由に諦めるよう諭され、荒んだ生活を送るようになるダークな魅力を持つ女性だ。

 多くの人が有村架純でイメージするのはたぶん優しげな笑顔だ。『ストロボ・エッジ』(2015)、『ナラタージュ』(2017)、『コーヒーが冷めないうちに』(2018)、『フォルトゥナの瞳』(2019)など、これまで演じてきた多くの役ではかなげに微笑む姿を印象付けてきた。

 だが、大友監督は有村の素晴らしさを“無防備な色気”だと語っている。『3月のライオン』に続いて『るろうに剣心 最終章 The Beginning』と、有村に2度も“笑顔を封じる役”をオファーしたのはなぜなのか?

『るろうに剣心 最終章 The Beginning』はシリーズ最後の作品にして始まりの物語。時代は先んじて公開された『るろうに剣心 最終章 The Final』の15年前、徳川慶喜が政権を明治天皇へ返上した大政奉還の4年前だ。緋村剣心が「不殺〈ころさず〉の誓い」を立てた理由、剣心の頬に「十字傷」が刻まれた理由が描かれる。

 シリーズに有村が出演するのは初。だが、これまでのシリーズ4作品で“巴と過ごした後の”剣心を演じてきた佐藤健は、「演じる僕の中には、雪代巴という1人の女性が内包されていました」「剣心としての自分を見つめ直そうとする度に、巴を想い、深呼吸をして本番に臨みました」という。

 有村が「とんでもないところに参加してしまった」と語るのも無理はない。シリーズが始まった約10年前に佐藤健が胸に抱いた像を具現化するのだ。