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40代に入った田中麗奈の“初めて見る顔” 輝くことを意図的に止めた映画『犬部!』

著者:関口 裕子

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(c)2021『犬部!』製作委員会
(c)2021『犬部!』製作委員会

 青春映画の名作『がんばっていきまっしょい』が公開されてから今年で23年。この作品で鮮烈な印象を残した田中麗奈さんは2016年に結婚し、19年末に第1子出産。産休を経て翌20年に復帰し、今年5月に41歳を迎えました。子育てと俳優業の両立はやはり大変なようですが、復帰後の作品では“新しい田中麗奈”を随所に見ることができるようです。映画ジャーナリストの関口裕子さんに解説していただきました。

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等身大の女子高生役から海外でも活躍した20代へ

 映画を観ていると、いろいろな気付きや発見があるもの。たまには久しぶりな俳優との再会もある。篠原哲雄監督、林遣都、中川大志主演の『犬部!』では、田中麗奈だった。

 田中は、磯村一路監督『がんばっていきまっしょい』(1998)で鮮烈な映画デビューを飾った。愛媛・松山を舞台にした同作は、ボートに青春をかけた高校生たちの姿を描いている。そして、真っ黒に日焼けした「悦ネエ(篠村悦子)」こと田中の涼やかな目は、観る者にいとおしさを抱かせ、応援せざるを得ない気持ちにさせた。

 映画は異例のロングランを記録。田中は新人賞を総なめし、ボート部のかけ声「がんばっていきまっしょい!」「しょい!」は流行り言葉となった。

 また、1998年に放送されたサントリーの清涼飲料水「なっちゃん」のCMも、田中を“お茶の間”に広く知らしめた。最初のCMは『Wの悲劇』風。ストーリー仕立てで新人女優のなっちゃんが育っていく様子を活写していった連続CMは、田中麗奈自身の成長とも並行し、絶大なCM効果をあげた。

 翌年には『犬部!』の監督である篠原哲雄監督と『はつ恋』(1999)で初タッグ。病に伏した母のために初恋の人を探し出し、再会させようと企む女子高生を演じた。

 田中は19歳だったが、母親役に原田美枝子、父親役に平田満、母親の初恋の人役に真田広之という豪華布陣にそん色なく相対し、座長として映画を牽引。当時の田中はオンとオフしかなく、しばらくして「人にはニュートラルな状態というのがある」ことを知ったと語っている。

 20代に入っても快進撃は続く。2004年には日中合作ドラマ「美顔」に主演。その時から勉強しているという中国語は日常会話に支障はなく、上海で撮影した時代劇アクションコメディ『幻遊伝』(2006)の時には町でサインを求められることもしばしば。『幻遊伝』で共演したチェン・ボーリンと再顔合わせとなった天願大介監督『暗いところで待ち合わせ』(2006)では孤独な盲目の女性を好演し、話題になった。

『東京マリーゴールド』(2001)、『きょうのできごと』(2003)、『夕凪の街 桜の国』(2007)を加え、国内、中国圏と幅広く活躍した20代。30代に入ってからは少しペースを落とすも、2017年には三島有紀子監督『幼な子われらに生まれ』の子連れ再婚した妻役で、助演女優賞を総なめした。