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カルチャー

同性の支持を集める“ガールクラッシュ”な英女優 自分の人生を幸せにする生き方とは

公開日:  /  更新日:

著者:関口 裕子

進むべき道をはっきり理解し、迷うことなく歩んできた人生

(c)2020 Focus Features, LLC.
(c)2020 Focus Features, LLC.

 そんなキャリーの評価に“ガールクラッシュ”と書かれたものがある。“同性である女性が惚れ込む魅力を持つ女性”という意味だそう。確かに、ティーンエイジャーの頃から自分の進むべき道をはっきり理解し、迷うことなく歩んできた彼女の生き方にはある意味憧れる。

 でもなぜそうできたのか? 「理由なんて分からない」と言っているが、想像するに彼女の「自分の人生を大切にする」という考え方が大いに貢献しているように思う。自分が幸せだと感じないものを選べば必ず迷いは生じるものだから。

 結婚してからは、さらに家族と過ごす時間を確保するように心がけているというキャリー。最近見ないなと思っていたが、『プロミシング・ヤング・ウーマン』への出演は約2年ぶり。2年に1作品の出演ペースは決して多くない。出演作を途切らせることのないよう仕事を選ぶハリウッドスターとは異なるスタンスだ。

 自分の仕事は演じること。メインステージは芝居だ。スターでいること、稼ぐことなどには興味がなく、いいものに出演し、そのいいものが途切れることなく循環していくための投資もする。誠の“ガールクラッシュ”だ。

 ちなみに『プロミシング・ヤング・ウーマン』は「観ていない方に内容を伝えない」という趣向。少しだけ明かすと、子どもに対する性的搾取防止などにも取り組む彼女の出演作ということもあり、女性の多くが経験したことのある“不快な出来事”がモチーフの1つになっている。

 そしてそれは『危険な情事』(1988)と対極にある視点で描かれている。鑑賞後に比較してみると30年強の時の流れで人々の意識がどう変わったか分かり胸が痛む。観賞後にSNSで発信できないフラストレーションはあるだろうが、ぜひ自身の目でご確認いただきたい。

 
『プロミシング・ヤング・ウーマン』全国にて公開中 (c)2020 Focus Features, LLC.

(関口 裕子)

関口 裕子(せきぐち・ゆうこ)

映画ジャーナリスト。「キネマ旬報」取締役編集長、米エンターテインメントビジネス紙「VARIETY」の日本版「バラエティ・ジャパン」編集長などを歴任。現在はフリーランス。