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四季を五感で楽しむカリフォルニアの暮らし 在住ナチュラリストが12年住んで見つけたもの

公開日:  /  更新日:

著者:小田島 勢子

動物の飼育に果樹やハーブの栽培 無理のない暮らしが愛おしい

 引っ越し当初はがらんとしていた裏庭。この10数年の間にボストンテリアの「トウフ」をはじめ、鶏3羽にミニブタ1匹と仲間が増えました。

 そして剪定もせず伸び放題のブドウや、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、ゆずなどの柑橘類、ビワと桑、ザクロとオリーブの木々が子どもたちと一緒に成長してきました。

10年前、初代のヒヨコと庭で取れた野菜【写真:小田島勢子】
10年前、初代のヒヨコと庭で取れた野菜【写真:小田島勢子】

 初めの頃はいろんな野菜も育てていたけれど、数年足らずでほとんどハーブ類の栽培に変化しました。このドライで水はけが悪いロサンゼルスの土地でも簡単に育つもののみが残り、共存しています。

 約10年同じ土地で暮らし、ほんの少しずつだけれど、ここ数年でようやく環境や生活のリズムや自分の性格に合った生活を送ることができるように。また、自然の変化や土地の特徴に抗うことなく無理のない暮らしを送ることで、我が家が年々愛しくなってきました。

庭に実ったものをふんだんに使って 春夏秋冬を五感で楽しむ

 春はハーブをはじめ草木の花が咲き、ミツバチたちがミツを集めにやってきます。鶏も換羽期が終わり、卵を産み始めます。日が長くなり、寒さから解放された動物たちと庭で日向ぼっこをする贅沢なひと時。

夏の日差しで干したシソなしの紅さし梅干し【写真:小田島勢子】
夏の日差しで干したシソなしの紅さし梅干し【写真:小田島勢子】

 夏は太陽の恵みをいただきます。梅干しもこの夏の日差しでより酸っぱく、より赤くなります。干した夏野菜を出来立ての梅酢とともに柴漬けにしたり、根野菜をまとめて細切りにして干し、保存用の瓶詰めにしたりすることも。

 菌も1年で一番活発な時期なので、紅茶キノコやビール、ワイン、ヨーグルトが日に日においしく発酵し、冬に仕込んだおみそはいよいよ熟成のクライマックスを迎えます。納豆は豆を煮て仕込みを終えたら一緒に庭へ出てしばし日光浴。太陽の熱によって醸され、夕飯時に家族で出来立てを食べて、おいしく夏バテを防ぎます。

 秋は実りの季節です。ブドウ、オリーブに桑の実。年中食べる分だけもぎ取る柑橘類も暑さが抜けたキッチンでまとめて発酵させて、塩レモンやタバスコ、レモンコショウを作ったり、マーマレードにしたりして、常温でも保存できるよう瓶詰めしておきます。

 冬は次の年のみそ仕込みに加え、キムチや漬け物作り。寒い方がおいしく仕上がる(私が感じているだけだけれど)ものを子どもたちと全身を使って作ります。

 お豆を炊く時の蒸気が部屋を暖かく包む中、こねたり塩もみしたりする際に水気を切る動作が血行を良くし、身体を温めてくれます。

 毎日ではないし、すべてが手作りではないけれど、ほんの少しだけでも暮らしのすぐそばにある季節の特徴を楽しみながら生きることができたら、豊かな気持ちになるなぁと感じています。

(小田島 勢子)

小田島 勢子(おだしま・せいこ)

ナチュラリスト。結婚を機に2004年に南カリフォルニア州へ移住し、3人の女の子を米国で出産。ロサンゼルスの片田舎でバックヤードに鶏たちと豚のスイ、犬のトウフとともに自然に囲まれた生活を送る。母になったことをきっかけに食や環境の大切さを改めて感じ、できることからコツコツと、手作り調味料や発酵食品、スーパーフードやリビングフードを取り入れた食生活をメインに、食べるものは「できるだけ子どもと一緒に作る」「残さない」がモットー。2015年に「RUSTIC」を設立。日本で取得した調理師の知識や経験を生かして食のアドバイザー、ライフスタイルのコーディネーターとして活動。日米プロスポーツ選手やアクション映画俳優の身体作りのアドバイザー、みそ、お酢、漬け物など発酵食品作りの講師、創作料理のケータリングなど幅広い分野で活躍。
https://rusticfarmla.com/