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子役から朝ドラヒロイン、大人の役者へ 『キネマの神様』で永野芽郁が託されたものとは

著者:関口 裕子

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(c)2021「キネマの神様」製作委員会
(c)2021「キネマの神様」製作委員会

 2018年度上半期放送のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「半分、青い。」でヒロイン楡野鈴愛を演じ、一躍お茶の間の人気を集めた永野芽郁さん。現在まだ21歳という若さながら、俳優として着実にキャリアを積み上げています。そんな永野さんの映画最新作は、日本を代表する巨匠・山田洋次監督が松竹映画100周年を記念してメガホンを取った『キネマの神様』。当初は志村けんさんの主演が予定されていましたが、急死に伴い沢田研二さんが抜擢された作品です。日本映画への愛と未来を表現した本作で、永野さんは一体どのような役割を果たしているのでしょうか。映画ジャーナリストの関口裕子さんが解説します。

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「テレビに出られる」くらいの好奇心で始めた芸能活動

 眼も鼻も丸くひと言で言うと愛らしい印象だが、それを構成している要素はかなりシャープだ。“注目の”という言葉がぴったりな俳優、永野芽郁のこと。

 山田洋次監督の最新作『キネマの神様』では、宮本信子演じる淑子の若き日を演じる。現在放送中のドラマ「ハコヅメ~たたかう!交番女子~」(日本テレビ系)では、戸田恵梨香とダブル主演。そして、前田哲監督の期待作『そして、バトンは渡された』(10月29日公開)では、人や時間が交錯する中で素晴らしい存在感を放って観る者を号泣させる。

 21歳。まだ若い永野だが、芸歴は10年以上。芸能活動を始めるきっかけはスカウトだという。小学校3年生の時に母親と歩いていた東京・吉祥寺サンロードで声を掛けられ、最初は「テレビに出られる」くらいの好奇心で始めた。モチベーションは、事務所で行うレッスンの楽しさと、その中に同世代の友だちができたことだという。

 2009年に子役として『ハード・リベンジ、ミリー ブラッディバトル』(2009)でデビュー。当時は大好きな学校を休まなくてはならないことが不満だった。だが今思えば、学校に家、仕事と居場所を分散できたことや、仕事の場に悩みを相談できる人がいたことは、思春期の悩みを解消させることに貢献したのではないかとも振り返る。

中谷美紀との共演などで開眼 大人の俳優への転機

 大人の俳優への転機になったのは三島有紀子監督・中谷美紀主演の『繕い裁つ人』(2015)、河合勇人監督・鈴木亮平主演の『俺物語!!』(2015)だった。

 オーディションが好きだという俳優は珍しいが、永野はそんな珍しい1人。オーディションのように“正解のないものを躊躇せずプレゼンすること”は、確固たる自信がなければ揺らいでしまう。永野にはそれを楽しむ余裕がある。そこがまずすごい。

 オーディションを楽しめる理由は、役が決まった後は監督など演出部のイメージに寄せていく必要があるが、オーディションでは自分の好きな解釈で演じることができるからだそう。「いい子でいなきゃいけないと思わなくなった」ことも永野を解放したのだろう。

 そんなふうに受けたオーディションで受かった『繕い裁つ人』で、永野は主演として“映画”に立ち向かう1人の俳優の姿を目撃した。中谷美紀だ。その姿は「いつか自分が主人公を演じられるときがきたら、こういうふうでありたい」と思えるものだったそう。

 当時の永野は、高校進学を前にしていた。子役出身の俳優が一度は未来について考えるこの時期、永野も演じる仕事を続けるかどうか漠然と迷っていたが、“オールロケ”という現地に泊まり込んでの撮影で主演俳優の在り方をつぶさに見る機会を得たのだ。

 そして続けてオーディションで得た『俺物語!!』のヒロイン、凛子役。凛子が恋をする同級生、猛男を演じる16歳年上の鈴木亮平をはじめ、現場は全員年上だった。ヒロインとして自分が前面に立たなくてはいけない場で「もっとうまくなりたい」と切実に願ったという。