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仕事・人生

電車事故で手足3本を失い「嘘だよね?」 美馬アンナさんに語った衝撃人生

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・佐藤 直子

事故後に目覚めた病院で味わった絶望感「嘘だよね?」

目が覚めた時には足がなかったという山田さん【写真:荒川祐史】
目が覚めた時には足がなかったという山田さん【写真:荒川祐史】

司会:2012年7月24日は山田さんの人生を大きく変える日になりましたが、事故の記憶はあまりないそうですね。

山田:はい。怪我をした瞬間、要するに電車に轢かれた瞬間の記憶はありません。仕事の疲れや睡眠不足で体調が万全ではない中、誘われて少しお酒を飲んでから電車で帰宅したところ、降りる駅を寝過ごして終点まで行ってしまいました。

反対方向へ乗ろうとしたホームでうたた寝し、慌てて飛び起きたところで線路に落ち、到着した電車に轢かれてしまった。これも後から聞いたことで、僕はほとんど覚えていません。はっきりと記憶があるのは、事故から10日後くらいに目が覚めたら病院のベッドにいたという状況ですね。

アンナ:目が覚めた時には、もう手足がなかったんですね。

山田:もう絶望でしたね。そもそも最初は夢だとしか思えなかったんです。嘘だろ、と。「足や腕がないように見えるけど、嘘だよね?」というのが率直な感想でした。

アンナ:それはちょっと想像を超えますね。私の場合は自分のお腹から息子が出てきた後、看護師さんが「生まれましたよ」と胸の上に息子を乗せてくれたんです。その時に「ちょっと待って、どうなっているの? 手がない!」と気が付いて。そこからの記憶にはモヤがかかっている感じです。

山田:出産して初めて知ったんですね。

アンナ:はい。私も衝撃を受けましたけど、山田さんの衝撃具合とはまったく比べものには……。

山田:いやいや、比べるものではないですよね。それぞれが見る景色であったり、味わう苦痛であったりは違うものなので、その人がつらいと思ったらそれはつらいことだと思います。

アンナ:そうですね。私は絶望もありましたが、不安の方が大きくて。将来、子どもがどんな思いをして生きていくのか、それを考えるとたまらなく不安でした。

山田:僕が何に絶望したかというとすごくシンプルで、“明日の自分”が思い描けなかったんです。例えば、寝る前に翌日の予定を考える時は「何時に起きて、何時に予定があって……」と思い描けますよね。数年後の自分は見えなくても、明日の自分は大体の人が見えている。でも、僕には明日の自分が見えない。見えないどころが見たくない。そういう心境でした。「これが絶望なんだ」と。自分から扉を閉ざし、未来を断っていた感じでした。

<中編に続く>

◇山田千紘(やまだ・ちひろ)
1991年生まれ、神奈川県出身。20歳の時に会社からの帰宅途中で電車に轢かれ、右腕と両脚を失う。絶望を味わいながらも周囲の愛情とサポートを受けて「誰かの勇気や刺激になること」を決意。通常は1年半ほどを要する義足歩行のリハビリを半年で終えたのち、自動車免許を取得。職業訓練校を経て、一人暮らしをしながら社会人として自立した生活を送る。インスタグラム(chi_kun0922)やツイッター(@chi_kun_cq22)に加え、昨年からYouTubeチャンネル「山田千紘 ちーチャンネル」で日常生活を発信。今では登録者数10万人を超える人気チャンネルに。7月23日には著書「線路は続くよどこまでも」(廣済堂出版)を出版した。

(Hint-Pot編集部・佐藤 直子)