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電車事故で手足3本を失っても「左腕がある」 壁を乗り越えてきた前向き思考はどこから?

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・佐藤 直子

Mr.Childrenの曲で湧いてくる負けん気 壁は「越えられる」

「最初、神様は意地悪だなと思いました」と山田さん【写真:荒川祐史】
「最初、神様は意地悪だなと思いました」と山田さん【写真:荒川祐史】

アンナ:そのバイタリティがすごい。以前、山田さんの義足製作を担当なさった中村隆さん(国立障害者リハビリテーションセンター)と対談させていただいた時、私の息子に右手がないのも、山田さんが事故で手足を失ったのも、「その2人だったら乗り越えられるからなんじゃないか」という話になったことを思い出しました。

 今でも「何でうちの子だったんだろう」と考えることはありますが、小さいながら笑顔で一生懸命生きる息子を見ていると「この子だったら乗り越えられるからなのかな」と感じることがたくさんあります。今も山田さんとお話をしていると、何だか納得できる部分があるというか……。

山田:僕は最初、神様は意地悪だなと思いました。当然ながらいろいろな葛藤があって、常に笑っていたわけじゃない。でも、大好きなMr.Childrenの「終わりなき旅」という曲を聴くと、「この壁を乗り越えたら、いい景色が待っているんだろうな。よっしゃ」と負けん気みたいなものが湧いてくるんです。メラメラするんですよね。

 悔しかったし、むちゃくちゃ泣いたし、「無理だ」と思ったこともありましたけど、その度に「神様は乗り越えられない試練は与えない」という言葉を言い聞かせて、「越えられるぞ。見てろよ」と思ってきました。

日本の社会は“見た目で判断しすぎ”ではないか

司会:20歳まではいわゆる「健常者」だったわけですが、事故で「障害者」と呼ばれるようになってから気付いたことはありますか。

山田:はい、あります。そもそも「障害者」と「健常者」の“区別”って何なんでしょうね。何をもって「健常」とし、何をもって「障害」とするのか。僕は手足がないだけで障害者とされることを、とても悔しく感じます。就職活動をする時も一般採用ではなく、障害者採用にされてしまう。現実として受け入れなければならないこともありますが、自分は強い気持ちを持って戦っていきたい、信念は貫き通したいと思います。

 一般採用に比べて障害者採用は給料が圧倒的に低いし、勤務内容として求められることも少ない。そう考えて社会を見てみると、企業のトップや政治家の中に障害者はほとんどいませんよね。2年前に参議院に車いすの議員が当選しましたが、その時も賛否がありました。

 日本の社会は見た目で判断しすぎだと感じています。ダイバーシティという観点から見ても、まず男女で区別して、国籍、人種で区別する。学校で同じクラスにいろいろな国籍や人種がいていいし、手足のない人がいてもいいじゃないですか。僕が通っていた小学校には障害者用の特別学級がありましたが、社会への入り口でもある学校でなぜ区別するのか。僕は好きではありません。

アンナ:私の小学校にも特別学級がありました。私はそこへよく遊びに行っていたり、高校の時にも性同一性障害の友達がいたりしたので、そこで区別する感覚を持っていなかったんです。けれど、息子が生まれてから“区別するという壁”と改めて向き合うことになりました。

 息子のような子どもたちのためにもっと住みやすい世界を作ったり、私と同じ悩みを持つ親御さんにメッセージを伝えたり、私の立場から何か発信していきたいと考え、息子の障害を公表したという背景があります。

山田:僕も今は「障害者とか健常者とか分けるのは好きじゃない」と言うくらいの力しかないので、もっと発信力を高めたり、新たな方法を考えたり、これから先もいろいろ挑戦していきたいと思います。

<後編へ続く>

◇山田千紘(やまだ・ちひろ)
1991年生まれ、神奈川県出身。20歳の時に会社からの帰宅途中で電車に轢かれ、右腕と両脚を失う。絶望を味わいながらも周囲の愛情とサポートを受けて「誰かの勇気や刺激になること」を決意。通常は1年半ほどを要する義足歩行のリハビリを半年で終えたのち、自動車免許を取得。職業訓練校を経て、一人暮らしをしながら社会人として自立した生活を送る。インスタグラム(chi_kun0922)やツイッター(@chi_kun_cq22)に加え、昨年からYouTubeチャンネル「山田千紘 ちーチャンネル」で日常生活を発信。今では登録者数10万人を超える人気チャンネルに。7月23日には著書「線路は続くよどこまでも」(廣済堂出版)を出版した。

(Hint-Pot編集部・佐藤 直子)