仕事・人生
人が人を呼ぶ アート作品のような瓶詰めピクルスが開いた世界の扉
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さまざまな分野で活躍する女性たちにスポットライトを当て、その人生を紐解く連載「私のビハインドストーリー」。今回は、愛媛県内子町で採れたての新鮮野菜をこだわりの瓶詰めにして販売する「GOOD MORNING FARM」を立ち上げた、齊藤美香さんのインタビュー後編です。今や世界的メーカーとコラボレーションするまでに成長した、同ブランドの生みの親であり、代表を務める齊藤さんに経営哲学を伺います。
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シンプルなロゴにもこだわりが 「どこか土を感じられるイメージ」
東京でグラフィックデザイナーとして忙しく働いていた齊藤美香さんが、東日本大震災を機に地元・愛媛に帰郷。大自然の中で育った感動するほどおいしい野菜を、友人たちにギフトにして届けたい。そんな思いをきっかけに瓶詰めピクルスを販売するようになりました。
「GOOD MORNING FARM」のシンプルながらも、目を引くロゴが貼られたカラフルな瓶詰めは、インスタグラムで“SNS映え”すると話題になっています。実はこのロゴにもこだわりが詰まっていると、代表でありながらも製造から販売を行っている齊藤さんは語ります。
齊藤さんが東京から地元に戻ってきて感動したのが、新鮮な野菜のおいしさ。抜け感を意識した「GOOD MORNING FARM」のロゴには「どこか土を感じられるイメージに」と思いが込められているそう。「すごく時間をかけて作りました」と振り返ります。
「仕事にする」と覚悟を決めたのはお客さんが求める後押しがあったから
“食いしん坊”を自称する齊藤さんは、自分の味覚を信じながらも、お客さんへのマーケティングリサーチを元に味や組み合わせ、ピクルス作りを進めているそう。中でも信条にしているのは、自分が一番楽しめることで好きなものを作ること。だからこそ、齊藤さんが生み出した瓶詰めピクルスは、たくさんの人から共感を得られるようになりました。
自宅のキッチンからスタートしたピクルス作りでしたが、気が付けば製造を委託するまでに成長。それでも追い付かなくなったことで、2018年、ついに店舗と加工場を自ら立ち上げることにしました。
ピクルス作りを始めて間もない頃は値段や帳簿の付け方、経営の仕方さえも分かりませんでしたが、周囲の後押しを受けて事業として仕事にする覚悟を決めたといいます。
「怖さとプレッシャーで眠れませんでした。でも、やっぱりお客さんが求めてくれたことが大きかったですね。マルシェに出店したことで小売店から卸しの注文もいただくようになり、少しずつイベントにも呼んでいただけるようになった。そして買ってくださったお客様がSNSにアップしてくださって、さらに評判になりました。多くのお客様が求めてくださったので、これはもう『仕事にしなきゃいけない』と覚悟を決めました」
東京から地元に帰郷したはずの齊藤さんでしたが、生み出した瓶詰めピクルスは逆に東京へと進出していきました。世界的な食品メーカーからのオファーを受けて生み出した商品は、テレビや雑誌に取り上げられ、大きな話題にもなりました。
「受注は増えていくけど、なかなかごはんを食べていくまでには至らない。そんな時期が結構あったので、正直、ホッとしました」と軌道に乗るまでの大変さを話してくれました。