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美馬アンナさんが見た東京パラリンピック 「これで終わりではなくここから先が大切」
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8月24日から9月5日まで13日間の日程で開催された東京2020パラリンピック競技大会。コロナ禍により無観客での開催となりましたが、日本代表は51のメダル(金13、銀15、銅23)を獲得する活躍を見せてくれました。開催の是非をめぐる議論が沸く中でも、パラリンピックの舞台を目指して選手が重ねた努力の日々、そして大舞台で披露したパフォーマンスの感動は変わりません。
自国で開催されたパラリンピックを、先天性上肢形成不全のため右手首から先がなく生まれた1歳10か月の男の子「ミニっち」の母であり、女優・タレントの美馬アンナさんはどんな想いを持って観たのでしょうか。その率直な気持ちを伺いました。
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パラリンピックを通じて感じた希望や勇気 親の視点に立つこともしばしば
今回の東京五輪と東京パラリンピックは自国開催ということもあり、テレビでじっくり観戦しました。正直なところ、ここまでちゃんと観たのは初めてかもしれません。
東京パラリンピックでは特に、出場なさった選手皆さんの身体能力の高さであったり、心の強さであったり、驚きと感動の連続でした。「すごい!」と思うと同時に、「どうしたらこういう人材が育つんだろう」と親の視点に立つこともしばしばでした。
日本国内の新型コロナウイルス感染者数が急増していたこともあり、開幕直前まで開催の是非が問われ、閉幕後も開催が正しい判断だったのか議論されています。
障害のある子を持つ親の立場である私と夫(千葉ロッテマリーンズ所属の美馬学投手)は、「パラアスリートが全力を尽くす姿を観ることができてよかった。とてもありがたい時間だったね」と話しています。パラリンピックを通じて、私たちは希望や夢を感じ取ることができた。そんな幸せに満ちた時間になりました。
プロ野球選手である夫には、同じアスリートとして勉強になる部分もあったようです。健常のアスリートであっても競技を続ける過程では、怪我であったりスランプであったり、何かしらの壁にぶつかります。
でも、パラアスリートの皆さんは先天性であれ後天性であれ、まず普段の生活の中で感じる差別や他人の目などを乗り越えてきた。その上でアスリートとして直面する壁を乗り越えているわけですから、その精神力の強さといったら計り知れないものがあるでしょう。
この舞台に立つまでにどれだけの壁を乗り越えてきたんだろう。どんな思いをしてきたんだろう。周りの人々はどうやって支えてきたんだろう。そんなことを考えると、アスリートはもちろんサポートする皆さんの想いも伝わってきて、結果にかかわらず、温かな気持ちになってきました。
新たな競技への関心 感じた課題
新しく知った競技もありました。例えば「ボッチャ」。レクリエーションのように見えるけど、一投一投に込められた真剣勝負はスポーツそのもの。重度の脳性麻痺の方でも、補助器具やアシストを得ながら活躍できる場があるのは素晴らしいと思います。
車いすラグビーや車いすバスケットボールの激しさにも驚きました。あまりに激しすぎて、車いすがボコボコになっていましたよね。
以前、対談させていただいたパラ競泳の一ノ瀬メイ選手(東京大会では補欠)が、障害の重さを考慮したクラス分けの難しさについてお話しされていました。私も今回注目していましたが、確かにクラス分けは難しそうです。四肢の形成不全と言っても、上肢なのか下肢なのか、片方なのか両方なのか。
公平になるように考えられているのでしょうが、同じクラス内でも障害の程度に差が生まれてしまうこともあり、みんなが納得する形を探すのは永遠のテーマになりそうです。