インタビュー

美馬アンナさん 先天性欠損症の長男が「腕を隠すことはあり得ない」 パラ競泳・一ノ瀬メイ選手との対談で示した覚悟

著者:Hint-Pot編集部・佐藤 直子

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オンラインで対談した一ノ瀬メイ選手(右)と美馬アンナさん【写真:Hint-Pot編集部】
オンラインで対談した一ノ瀬メイ選手(右)と美馬アンナさん【写真:Hint-Pot編集部】

リオパラに出場した競泳の一ノ瀬メイ選手 先天性欠損症の第1子を育てる美馬アンナさんの対談第2弾

 先天性欠損症により右手首から先がない1歳の男の子「ミニっち」の母で、女優やタレントとして活動する美馬アンナさん。プロ野球の千葉ロッテマリーンズで活躍する美馬学(みま・まなぶ)投手の妻でもあるアンナさんは、障害を持って生まれてきた我が子との出会いをきっかけに「使命」を感じるようになりました。それが、野球やスポーツを通じて、健常者と障害者をつなぐ活動をしたり、障害を持つ子どもの家族が意見交換や情報共有をできる場を作っていくこと。その使命を実現させるヒントを探るため、今月からさまざまなジャンルの方と対談をしていきます。

 第1回のゲストは、リオパラリンピックに出場した競泳の一ノ瀬メイ選手です。人より右腕が短い個性を持つだけで「障害者だとは思ったことがない」という一ノ瀬選手は、インスタグラムやメディアを通じて前向きな言葉や想いを積極的に発信しています。アンナさんも、その発信から「希望」をもらった1人でした。

 大いに盛り上がったオンライン対談シリーズ(全3回)の第2回は、一ノ瀬選手のご両親による教え、「自信」が持つ意味などについて語り合います。

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「今も毎日は覚えてないんですよ、自分の右腕が短いってこと」

――おふたりの言葉には伝える力がありますよね。特に一ノ瀬選手は、高校時代はもちろん幼い頃から自分の意見をしっかり持ち、ご自身に誇りを持っているように思えます。それはご両親が育ててくれた環境の影響が大きいのでしょうか。

一ノ瀬メイ選手(以下メイ):多分そうやと思います。例えば、私には短い右腕を隠すっていう発想がないんですよ。小さい頃から右腕がちゃんと出るように両親が洋服の袖を切ってくれて、一度も隠されたことがないんです。だから、自分でも腕は隠すものじゃないって思っていました。でも、同じパラリンピックの選手でも、代表になるまでは長袖で隠していたんだよねっていう人もいるんです。私、それを聞いた時にすごくびっくりして。だから、両親が隠さずに「それが当たり前」って育ててくれたことがすごく大きかったと思います。今も毎日は覚えてないんですよ、自分の右腕が短いってこと。街を歩いていてジロジロ見られたら「あれ、ゴーグル焼けがひどいんかな?」って思ってしまう(笑)。それくらい自分の腕について何とも思ってないんですよね。

美馬アンナ(以下アンナ):(笑)。

メイ:あと、私の両親は「他人と違うことはラッキーだ」って教えてくれたんです。みんな就職活動の時とか、自分の強みを探すじゃないですか。「他人とは違う自分にだけ持っているものって何だろう」って問うと思うんですけど、私は違いがこんなにも明らかで良かったって思います。もし自分がダブルでもなくて、体も普通だったら、逆にどうやって自分に価値を見出したのか分からない。これだけ他人との違いがあったからこそ、自分にしかできないことが簡単に思い浮かんだ。小さい頃から何か使命のようなものを感じて過ごしてこられたのは、他人との違いがあったからこそ。両親がずっと「違いを生かしなさい」「違いを持つことはラッキーだ」って教えてくれていたので、私はそういう風に思っています。

アンナ:素晴らしすぎますね。だからこそ、9歳の時に腕が短いことを理由にスイミングスクールへの入会を断られた時に大きなショックを受けたんでしょうね。

メイ:そうなんです。「あ、腕が短いのって当たり前じゃないんや」って、その時初めて気付いたというか。

アンナ:初めて自分が障害者だって思わされて、帰り道にお母さんと2人で泣いた、という話をテレビで拝見して、私も息子とスイミングを始める時に聞いたんです。「息子は右手首から先がないけれど、もし大きくなって水泳を長く続けたいとなった時に断るようだったら、お世話になるのはここではないと思うんです。いかがですか」って。そうしたら「そんなの関係ないから一緒にやりましょう」って言っていただけたんですね。状況は変わっているんだなって感じたんですけど、それは一ノ瀬選手のように発信してくれる人たちがいたからだと思うんです。

 私は息子が生まれて右手首から先がないと分かった時、自分の子なのに障害者だって認識しちゃったんですよね。だから毎日涙が出たし、「あれもできない、これもできない」って考えたし。それに気付いた時、自分が情けなくなっちゃって……。今まで障害を持っている人を見ると「かわいそう」っていう気持ちが自然に生まれていた。息子を見ていても、申し訳ないっていう気持ちやかわいそうっていう気持ちが湧いてきていたんです。でも、そう思うこと自体、私が線引きをしている。そんな自分が親になるってどうなんだろうって考えたこともありました。そんな時、うちの主人は「右手がないから何なの?」って、私より早く事実を受け止めて、先を見ていたんです。

 そこから私も考え方が変わって、一ノ瀬選手のご両親をはじめ、頑張っている親御さんの声がもっと世に届けばいいな、自分がそのきっかけになれたらいいなって思うようになって、息子の腕について公表しました。一ノ瀬選手が「自分が元気に生きているだけで何かが伝わると思う」って言うのと同じで、私たち家族が元気に愛を持って楽しく過ごすことで、障害を持つ持たないに関係なく、いろいろな方が家族を振り返るきっかけになったらいいなと思っています。だから、これから息子を育てる中で腕を隠すことは絶対にあり得ない。息子を受け入れてくれなかったり、差別されたりしたら、こっちから願い下げです(笑)。