仕事・人生
始まりはママ友への一言 普通の会社員が地元名物のビール造りを始めたわけ
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さまざまな分野で活躍する女性たち……と聞くと、「自分とは異なる世界で生きている」「自分とは違う特別な人なのでは」と、まったく関係のない話だと感じてしまう方が多いかもしれません。とはいえ、「生きる」中で感じることや苦悩は、どのような立場でも存在しています。そんな「特別」と思いがちな人物にスポットライトを当て、それぞれの人生を紐解く連載「私のビハインドストーリー」。第4回(前編)は東京の二子玉川でクラフトビールが楽しめる「ふたこビール醸造所」を経営する市原尚子さんです。
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街づくりイベントの企画発表がきっかけでクラフトビールの世界へ
会社員として働いていた市原さんにとって、クラフトビール造りは「自分の人生設計の中に一切入っていなかった」と語ります。そんな市原さんがなぜ、二子玉川でクラフトビールを造り始めたのでしょうか。
それは 今から7年ほど前の2014年8月、市原さんが暮らす二子玉川で開催された街づくりイベントのプレゼン大会がきっかけでした。
「『二子玉川にあったらいいな』と思うものや『自分がやりたい・やってみたい』という夢を語るちょっとした発表会でした。そこにママ友が参加することになったのですが、「何を発表しよう」と悩んでいたんです。そこで私は『この街のビール』を提案してみたらと勧めました」
すると、そのママ友はたまたまプレゼン前日に開催されるビール講座のイベントを発見。「残席2だったから申し込んでおいたよ」と言われ、市原さんは一緒に参加することになりました。
その後、市原さんたちは、講座で教わったビール造りの説明をパワーポイントにまとめてプレゼン。発表は成功し、会場からは「いいね」「やろう」「どうやってやるか調べて」と、賛同の声がたくさん上がったのでした。
街づくりイベント関係者から「実現に向けて具体的に調べてきてください」と言われて、「分かりました!」と二つ返事で引き受けてしまったという市原さん。こうして状況が飲み込めないまま、二子玉川でクラフトビール造りに取り組むことに。市原さんはその足でクラフトビールの醸造所へと出向き、質問してみることにしました。
「突然、醸造所にやってきて『クラフトビールはどうやったら造れるんですか?』『これ、何ですか?』って、あれやこれやと知識のない人間に聞かれたら、さすがに店主もムッとしますよね? 漫画で顔に斜線が入る画があるじゃないですか。あの斜線が店主の顔にはっきりと見えましたから(苦笑)」