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ぶどうは房の上と下どちらが甘い? 旬に知りたいもっとおいしくなる話
公開日: / 更新日:
教えてくれた人:和漢 歩実
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世界では1万以上の品種があるとされるぶどう。日本では生食用(そのまま食べる)として60種類以上栽培されていると言われています。種類によってそれぞれ旬が異なりますが、日本では盛夏から秋にかけてお店に並び、今がおいしさのピークですね。ぶどうに含まれる栄養や豆知識について栄養士の和漢歩実さんに聞きました。
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古代から人類に親しまれた果実
ぶどうと人のつながりは古く、古代エジプトの壁画などに栽培の様子が描かれるなど、紀元前からなじみがあったようです。
○日本のぶどう栽培の歴史
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諸説ありますが、日本では奈良時代にはぶどうをモチーフにした絵柄があり、すでに認識されていたとされ、鎌倉時代に栽培が始まったようです。
明治時代になると、産業の振興のために政府はぶどう栽培に注目します。欧米から多くのぶどう品種を導入しましたが、雨の多い日本の気候は栽培に向かず、当初は害虫や病害で育たなかったようです。しかし研究が進み、生産者や研究者たちが日本の気候に適した品種を誕生させて、現在のようにたくさんの品種が作られるようになりました。
○贈答用として人気の高級品も
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ぶどうは世界で最も生産量が多い果物で約7割がワインの原料用と作られていますが、日本では約9割が生食用として作られ、60種類以上の品種があります。高級ぶどうとして知られるのは石川県が開発した「ルビーロマン」。贈答用として人気があります。2021年7月中旬の初競りでは1房140万円の値が付けられ、話題になりました。
ぶどうのうれしい栄養素
ぶどうは「畑のミルク」とヨーロッパで呼ばれるほど、栄養が豊富な果物です。
○疲労回復やむくみ予防にも

主成分は「ブドウ糖」です。「グルコース」と言われる自然界に最も多く存在する単糖類。生きていく上でエネルギーとなる必要不可欠な糖質です。日本ではぶどうから発見されたため、その名が付けられたとか。脱水や激しい運動で消耗した時にも体内に素早く吸収されるので、疲労回復、手軽なエネルギー補給に向くと言われています。
代表される成分は、眼精疲労の予防で知られるポリフェノールの一種アントシアニン、抗酸化作用があるレスベラトロールは皮に含まれています。またカリウムも豊富。体内のナトリウムを排出させて、むくみや高血圧の予防が期待されています。
○栄養は豊富だけど食べ過ぎはNG
日本食品標準成分表2020年版(八訂)によると、ぶどうの可食部100グラムあたり59キロカロリー。大粒のぶどう1粒を約15グラムとすると約9キロカロリーに。ちなみにリンゴ1/8個は約22キロカロリー、梨1/8個は約16キロカロリー。上記は目安で、甘味が強ければ糖質も多くなり、エネルギー(カロリー)も高くなります。体に良さそうな栄養素が豊富だからといって大量に食べると、デメリットの方が多くなるので、ほどほどの量にしましょう。
ぶどうの謎 甘いのは上側? 白い粉の正体は?

ぶどうは、太陽の光を浴びると房の軸(上側)の方から成熟が進みます。上側の方が房の下側と比べて糖度が高くなる傾向にあると言われます。けれども、成熟が進むにつれて下側も上側の糖度に追い付いてくるようです。房の上側と下側とで食べ比べてみるのも楽しいですよね。
ところで、ぶどうの皮に白い粉がついていると気になったことはありませんか? これは果粉(ブルーム)という天然の成分。病気を防いだり、水分を保ったりするために、果実に含まれる脂質から作られたろうが果皮の表面に浮き出たものです。ブルームがついているということは、新鮮で健康なぶどうである目安の一つでもあります。
おいしいぶどうの見分け方
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おいしいぶどうのチェックポイント
- 軸
きれいな緑色でしっかりとしている - 粒
ふっくらとして大きさが揃っている - 皮
色づきが濃くて鮮やか
ちなみに皮の色は黒系(黒紫)、赤系、黄緑系に分かれます。栽培すると最初は緑色ですが、成長するにつれて赤や黒の色素が作られて、果皮の色が異なってくるそうです。また粒と粒がびっしり詰まっているぶどうよりも、やや隙間がある方がまんべんなく太陽の光が当たるため、甘いと言われています。
ぶどうの保存のコツ
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日持ちはあまりしません。すぐに食べる方が良いですが、最後までおいしくいただくためにも、正しい方法で保存しましょう。
○常温保存
保存する時は乾燥しないように、新聞紙やキッチンペーパーなどで包み、ポリ袋に入れて冷暗所か冷蔵庫の野菜室に入れると良いでしょう。大粒のものでしたら、軸を少し残して1粒ずつカットしておくと、やや長持ちします。ブルームは落とさずそのままで保存を。食べる前に水洗いしましょう。
○冷凍保存
冷凍保存する際は、先に水洗いします。さっと洗ったら、しっかりと水分を取り、冷凍用保存袋や容器に入れて冷凍します。シャーベット風に楽しめます。無糖ヨーグルト(カルシウム)と無調整豆乳(タンパク質、イソフラボン)を加えて皮ごとスムージーにすると良いですね。
栄養豊富なぶどう 旬の時期に味わって
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最盛期を迎えたぶどう。栄養素やおいしいぶどうの見分け方、保存方法についてご紹介してきました。甘くてジューシーなだけでなく、栄養素も豊富なんてうれしいですね。せっかく購入するなら、よりおいしいぶどうを選びたいものです。日本でもたくさんの品種が作られるようになったことに感謝しつつ、さまざまな品種を食べ比べしてみるのも楽しいですね。今回ご紹介した選び方や保存方法を参考に、旬の味覚を味わってみてください。
(Hint-Pot編集部)
和漢 歩実(わかん・ゆみ)
栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。
ブログ:和漢歩実のおいしい栄養塾