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藤井聡太三冠を目指して 親が知っておきたい「日本文化」としての将棋の素晴らしい側面
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玉と王の違いには礼儀の「礼」の思想が
もう一つ、将棋の日本文化としての素晴らしさを示すものを紹介します。将棋の駒をよく見ると、一番大切な駒である玉が、もう一つは王という表記になっていることが分かると思います。
玉と王、読み方も「ぎょく」と「おう」で違いますし、見た目も違います。機能はまったく同じにもかかわらずです。これには意味があって、王を持つのは上位者または年長者。玉は下位者または年少者。こういう決まりがあるのです。
これは礼儀の「礼」の思想が入っていて、これも潔さと同様、日本人ならその大切さが分かる精神文化です。例えば、初対面の2人が対局しようとした場合、お互いが自分を伝えて、かつ相手の話に耳を傾けるという、最低限の礼儀をわきまえていないと、王と玉をどちらが持つかがいつまで経っても決まりません。つまり、身のほどをわきまえない礼儀知らずは、そもそも対局ができないことになります。将棋はゲームですが、ゲームである以前に文化なのです。
「負けました」という投了の作法と玉と王の違い。この2つを理解するだけでも、将棋を子どもに習わせることに魅力を感じていただけるのではないでしょうか。礼儀と潔さの大切さを体得しつつ、世界最高峰の完成度のゲームを楽しみ、かつ頭脳トレーニングができる将棋にぜひ触れていただきたいと思います。
(真田 圭一)
真田 圭一(さなだ・けいいち)
1972年10月6日、千葉県八千代市生まれ。故・松田茂役九段門下。85年、奨励会に入り92年4月、四段に昇段しプロ棋士に。97年、第10期竜王戦でタイトル初挑戦。98年、将棋大賞新人賞受賞。99~2003年、日本将棋連盟理事を務めた。16年、八段昇進。