からだ・美容
30歳で始めたバレエに魅了され…大企業の会社員に起業を決意させた中高年女性の笑顔
公開日: / 更新日:
起業のきっかけは老人ホームで出会った笑顔「こんな経験、人生初めて」
バレエを始めて6年目の2013年に転機が訪れました。介護福祉士を目指すバレエ仲間から実習先の老人ホームで空きスペースを借りられるという話が舞い込み、6人ほどのメンバーで「ボランティアでバレエを教えてみよう」と一致団結。バレエの基本的な立ち方やステップで高齢者でもできる動きを教えてみることに。すると……。
「60代から80代まで参加してくれた方々が『バレエやってみたかったのよ』『膝の痛みが良くなった気がするわ』と喜んでくれたんです。笑顔で直接『ありがとう』と言われたことが、本当にうれしくて。ボランティア経験を重ねるうちに、もっと多くの中高年世代に健康対策としてバレエを届けたいと思うようになりました」
当時、OLとして仕事にやりがいを感じられず「ずっとこのままなのかな」と漠然とした思いを抱いていた藤井さん。「自分で工夫して作ったバレエのレッスンに対して『本当にありがとう』と心を込めて言ってくださる。こんな経験、人生初めてくらいに感じました」。老人ホームで出会った数多くの笑顔に背中を押され、バレエ仲間の1人と一緒に2013年、大阪・堺に「エイジレスバレエ・ストレッチ」を起業しました。
目指すは「誰でも何歳でも気軽に始められ、一生続けられるバレエを活用した運動プログラム」。バレエ講師や医師、音楽家らにアドバイスを求めながら試行錯誤を繰り返し、およそ4年をかけて独自のプログラムを制作しました。地道な宣伝活動や口コミで生徒が徐々に増え、大阪の直営スタジオの他、京都、名古屋、岡山でも受講できるまでに。
生徒は40代から80代までと幅広く、9割以上がバレエ初心者。最初はジムに行くような動きやすい服装からスタートするものの、バレエシューズを履いてレッスンを重ねるうちに「皆さん、だんだんバレエらしいエレガントな服装に変わっていきますね」といいます。
「タンスに眠っていた昔のスカートをレッスン着に直したり、薄手の洋服をリメイクしたり、工夫して楽しんでいらっしゃいます。服装で気持ちが上がると、レッスンへの集中力も上がりますから大事ですよね。レッスンでバレエの立ち方や足の踏みしめ加減、膝の感覚、おしりの締まり具合のバランスが掴めると、姿勢がどんどん良くなってすごく若々しく見えるようになるので、普段のお洋服もおしゃれな方が多いですね」
最高齢は86歳 背筋が伸びて若々しくなる姿からもらう明日への活力
姿勢が良くなり、体の調子が整うと、自然と気分が上向きになり、表情が明るくなります。その変化を生徒にも実感してもらいたいと、半年に1度、正面、真横、真後ろから写真撮影をして比較。
「バレエは人間の体をどうしたら一番きれいに見せられるか研究し尽くされています。音楽も衣装も女性が楽しめるものばかり。体作りをしながら芸術や美も楽しめるってバレエに代わるものはないんじゃないかと思います」
中高年世代の女性がどんどん輝きを増す姿を活力とする藤井さんは今年、自身が描く未来予想図を実現するため、「エイジレスバレエ・ストレッチ」を離れ、大阪・淀屋橋を拠点に「ハピバス」として新たな一歩を踏み出しました。このスタジオを発信基地にして、対面レッスンやオンラインレッスンなどを通じ、全国のバレエに興味がある女性に向けて気軽に楽しめる健康作りを届けていく予定です。
「生徒は今、100人くらい。60~70代が6割くらいで、最高齢は86歳の方で80代も多いですが80代には見えない若々しさです。特にレッスン中は背筋が伸びて、本当にきれい。皆さんの自信にもなるようです。でも、レッスンが終わった途端に背中が丸くなる方もいて、まっすぐ伸ばしたまま帰ってくださいねって言うんです(笑)。その姿がまた、かわいらしいんですけど」
2021年は自身にとって「過渡期」と位置付ける藤井さん。新しいステージでの挑戦は決して楽なものではありませんが、1人でも多くの女性にハッピーな笑顔を届けるため、一歩一歩積み重ねていきます。
兵庫県出身。大学卒業後は一部上場企業に就職し、事務職を担当。2008年に30歳でバレエを始め、その魅力の虜になる。2013年に中高年女性を対象とした「健康づくりのバレエ・ストレッチボランティア」をスタート。その2年後に会社を辞め、バレエ仲間とともに大阪・堺に「エイジレスバレエ・ストレッチ」を起業する。2021年に共同経営を解消。大阪・淀屋橋に「ハピバス(ハッピーバレエストレッチ)」を立ち上げ、中高年世代の女性が気軽に始められるバレエを活用した運動プログラムを提供している。
(Hint-Pot編集部・佐藤 直子)