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からだ・美容

大企業を辞め“大人のためのバレエ”で起業した女性 「とても生きやすくなった」理由とは

公開日:  /  更新日:

著者:Hint-Pot編集部・佐藤 直子

バレエによる健康作りを500年先、1000年先の未来に引き継ぎたい

 2015年、バレエ仲間とともに「エイジレスバレエ・ストレッチ」を大阪・堺からスタート。初心者には勇気がいるバレエを、健康作りとして中高年世代が気軽に楽しめるように活動を続けました。専門家や医師のアドバイスを仰ぎながら独自の運動プログラムを作り上げ、京都や名古屋、岡山へも事業を拡大し、生徒数はおよそ200人に。

 そして今年、新たなステージへ進むべく共同経営を解消。「ハピバス(ハッピーバレエストレッチ)」として、大阪・淀屋橋を拠点に新たなスタートを切りました。

 藤井さんには夢があります。バレエがより幅広い年齢層に親しまれ、一生涯楽しめるような場所を各地に作ることです。そして「壮大すぎて笑われるかもしれませんけど(笑)」と言葉を続けます。

「中高年世代が健康作りとしてバレエを楽しむプログラムを、500年後も1000年後も当たり前に引き継がれていくものにしたいなと思っています。バレエ自体が500年以上の歴史を持つもの。本当に良いものは時代が変わっても廃れずに、誰かが引き継いで今に至ります。

 日本には100年ほど前に伝わり、当初は上流階級の楽しみだったものが、今では子どもの習い事として広まりました。近年では大人から始めるバレエ教室が20~30代に人気です。この流れを考えると、中高年世代が健康作りとしてバレエに親しむことはまったくおかしくないと思うんですよね」

 500年先の未来には、バレエによる健康作りが文化として根付いている。そんな夢を共有する講師陣と「私たち、パイオニアやからね!」を合言葉に試行錯誤を繰り返しているとか。

 まずは淀屋橋の直営スタジオで事業基盤を固め、東京や全国に展開できるモデルケースを作り上げることが目標。大きな夢を実現させるために奮闘の毎日です。「健康作りのバレエをやりたいと思った時、その地域に必ず選択肢としてある事業にしたい」と、将来的には全国の自治体との協力も視野に入れているそうです。

「気持ちは本当によく分かります」踏み出せない女性に送るアドバイス

中高年世代の生徒さんの成長を見守る藤井治子さん【写真提供:藤井治子】
中高年世代の生徒さんの成長を見守る藤井治子さん【写真提供:藤井治子】

 藤井さんはコロナ禍の中、「ハピバス」として新たに一歩を踏み出したばかり。不安や苦労と背中合わせの日々を送っていますが、「忙しいけれど楽しいんですよね」と穏やかに微笑みます。8年前、後悔はしたくないと会社を辞めた決断は間違っていなかったと思うからこそ、将来を悩む女性たちにこんなアドバイスも。

「私も踏み出せずに苦しんだ覚えがあるので、気持ちは本当によく分かります。だからこそ伝えたいのは、まず自分を否定しないことが大切だということ。やってみたいことがあっても、女性は『私には無理じゃないかな』って否定しがちなんですよね。

 でも、それでは何も始まらない。できないかもと思ったら、どうしたらできるかを考えて、小さな一歩から始めるといいと思います。私がボランティアからスタートしたように。小さな一歩を積み重ねることで、夢は達成できますから」

 ボランティア活動を積み重ねながら、次第に起業の青写真を描けるようになった藤井さん。自分で自分を幸せにできるコツは、素直に一度やってみることだといいます。

「自分の心に耳を傾けたり、自分からやりたいことを探しに出たり。やりたいことが見つかったら、素直に一度やってみることが自分で自分を幸せにできるコツじゃないかと思います。自分を信じること。できないと思ったらできない。できると思ったら、その一歩が踏み出せる。そこからかな」

 6年前に離婚を経験し、今はお気に入りという築40年の住まいで愛猫1匹と暮らす日々。「自分が本当にやりたいことだけに没頭できる環境に方向転換して以来、とても生きやすくなりました」と語る笑顔は、輝きに満ちあふれていました。

◇藤井治子(ふじい・はるこ)
兵庫県出身。大学卒業後は一部上場企業に就職し、事務職を担当。2008年に30歳でバレエを始め、その魅力の虜になる。2013年に中高年女性を対象とした「健康づくりのバレエ・ストレッチボランティア」をスタート。その2年後に会社を辞め、バレエ仲間とともに大阪・堺に「エイジレスバレエ・ストレッチ」を起業する。2021年に共同経営を解消。大阪・淀屋橋に「ハピバス(ハッピーバレエストレッチ)」を立ち上げ、中高年世代の女性が気軽に始められるバレエを活用した運動プログラムを提供している。

(Hint-Pot編集部・佐藤 直子)